ファンマーケティングで商品の差別化を図れ!

横を向く女性

今日の論点


機能強化は差別化戦略ではない

今回のテーマは「差別化」です。競合他社に打ち勝つために、商品やサービスの機能を高めて差別化を図る努力をされていると思いますが、残念ながら、それが価格競争を引き起こします。

 

「おいおい、差別化を図ると利益が出るんじゃないの。」と思ったあなた。その考え自体は正しいです。ただ問題なのは、商品やサービスの機能を高めることが、差別化につながると考えていることです。

 

あなたの考えている差別化の定義が、本来のものと少し異なっているという所に問題があるのです。

 

安売り続きで価格競争が深刻な問題だ、そう考えている経営者の方は必見です。



目次


1. 差別化の基本とはなにか?


会議中の男性と女性

1.1 差別化が価格競争を生む

あなたは競合他社に打ち勝つために、商品やサービスの機能を強化して、差別化を図りました。この機能強化は、あなたの会社に大きな利益をもたらしました・・・めでたし、めでたし・・・とはなりません。

 

なぜなら、あなたの成功を見た競合他社は、必ず自社商品の機能を強化して来るからです。あなたの商品やサービスを上回る機能を付加してくれば、あなたの商品は売れなくなります。

 

そうなると、今度はあなたが機能を強化を図り、その次は競合他社が、またその次はあなたが・・・強化にも限界がありますので、最終的にはその強化した機能で差別化が図れなくなるわけです。

 

機能で差別化が図れなくなると、最終的には価格での勝負となります。これが価格競争に陥る原因なのです。

 

どの経営書を読んでも、差別化戦略を実施することは、正しいことであると書いてあります。でも価格競争に陥ってしまう。

 

そもそも、どこで間違えてしまったのでしょうか。まずは、この「差別化」を正しく理解するところから始めましょう。

 


1.2 差別化は「違い」を作ることではない

差別化戦略の生みの親とも言える、ハーバード大学院のマイケル・ポーター教授は、著書の「競争の戦略」で差別化戦略を次のように定義付けています。

 

差別化戦略とは「自社の製品やサービスを差別化して、業界の中でも特異だと見られるなにかを創造しようとする戦略である。」

 

一般的に差別化戦略は、競合他社との「違い」を作ることだと認識されていますので、何でもかんでも手当り次第に、機能強化を図り、それが差別化戦略だとしているわけです。

 

ただ、よく見てください。マイケル・ポーター教授は「違い」ではなく「特異」と表現しています。「特異」というのは、競合他社に抜きん出て、自社だけが提供できる価値のことであり、それは簡単に模倣することが出来ない価値だということなのです。

 

一般的に言われる差別化戦略は、「特異」ではなく「違い」でしかありません。商品の機能やサービスを向上させたとしても、独自性がないため簡単に模倣されてしまいます。模倣された瞬間に「違い」ではなくなってしまうため、差別化できる要因ではなくなる訳です。

 

さまざまな機能において、競合同士が模倣を続けると、商品やサービスの違いはなくなってしまい、最終的には価格でしか差別化できなくなります。マイケル・ポーター教授は、このような状況のことを「競争の収斂(しゅうれん)」と呼んでいます。

 

それでは、どうすれば模倣されない差別化ができるようになるのか、検討していきましょう。



2. 模倣されない差別化戦略の作り方


会議中の男女4人

2.1 差別化の鍵は顧客を知ること

差別化を図るには、まずは顧客の購買行動を知らなければなりません。今回は経営コンサルタントのフレッド・クロフォード氏と、著述家のライアン・マシューズ氏が書いた「競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」をベースに話を進めていきます。この書籍はマーケティングの大家である、フィリップ・コトラー氏が推薦したことで有名になりました。

 

筆者たちは3年間に渡る調査を実施し、顧客の購買行動を分析した結果、要約すると次の結論に達した主張しています。

 

顧客に価格について聞くと「安ければ安いほどいい」と答え、品質について聞くと「最高品質の商品が欲しい」と答える。従って全てについて「ベスト」を目指すべきだと考えられてきたが、それは勘違いである。顧客が求めているものは商品価値ではなく「価値観」であり、これこそが差別化の鍵を握っている。

 

 

この書籍では、差別化を図り独自のポジションを確立するために、調査結果を5つのカテゴリーに分類して解説されています。それでは、ひとつずつその概要を見ていきましょう。


差別化|1. 価格

1. 価格

いままでは、顧客は安いものを求めていると考えられてきましたが、ただ単に安いものを求めているわけではないことが解りました。顧客が本当に求めているものは、激安の価格ではなく適正で公正な価格なのです。一時的な値下げなどではなく、全ての商品に対して、安心して購入できる価格が設定されている、そういう信頼感を求めているのです。価格を差別化要因とする場合に最も重要なことは、価格が安いことではなく「価格に対する一貫性」なのです。

 


差別化|2. サービス

2. サービス

サービスを追加すれば、顧客の満足度は高まると考えられてきましたが、顧客がそのサービスを必要としていない場合は、付加価値として認識されないことが解りました。細切れのサービスを多く提供しても、手間だけが増えて、効果はほとんど期待できないということです。サービスで差別化を図る場合に最も大切なことは、基本的なサービスのクオリティを高めるということなのです。顧客が本当に必要としているサービスに対して、常に磨きをかける必要があるのです。


差別化|3. アクセス

3. アクセス

立地の良い場所に店舗を構えることが差別化につながると考えられてきましたが、物理的なアクセスの良さはあまり期待されていません。それよりも、欲しい商品を「さっと買える」ことが重要で、いかに物理的なアクセスが良いといっても、牛乳パックを1つ購入するのに、大型スーパーマーケットは適当ではないということです。アクセスで差別化を図るということは、欲しいものをすぐに購入できるような環境を提供することなのです。


差別化|4. 商品

4. 商品

顧客が求めているものは「最高」の商品だと考えられてきましたが、実際は「そこそこ」の 商品で十分満足しています。顧客が本当に求めているものは、どの商品もそこそこの品質が担保されており、安心して購入できるという信頼感なのです。商品で差別化を図る場合に大切なことは、商品の「品質に対する一貫性」です。品質に一貫性があれば、仮に欲しい商品が品切れであったとしても、安心して別の商品を購入できるというわけです。


差別化|5. 経験価値

5. 経験価値

商品を購入する際に、別のなにかで「楽しませる」ことができれば良いと考えられてきましたが、 その認識は正しくないようです。顧客が必要としているものはエンターテインメントなどではなく、ひとりの人として大切に扱われているかということです。顧客に対する理解を深めて、それを気遣いとして提供することにより、顧客と企業とは親密な関係を築くことができるようになるのです。


2.2 日本国内でも価値観が重視されるのか?

これらの調査結果は米国で実施されたものであり、それをそのまま他国に当てはめてよいのかという疑問が残ります。発展途上国では、顧客はまだ「安い」商品を求めているという調査レポートもあるからです。

 

日本国内でも価値観を重視する傾向にあるのかを確認するために、経済産業省の調査結果を見てみましょう。下記のグラフは、平成29年3月1日に経済産業省が発表した「消費者価値観の変化」に関する資料(※1)です。

※1:「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化」研究 , 6-7 , (経済産業省 2017)

 

<消費者価値観の変化(自分にあったものを求める)>

回答 2000年 2015年 変化

とにかく安くて経済的なものを買う    

50.2%

34.5%

自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ

22.9% 31.8%

自分の好きなものはたとえ高価でも貯金して買う

16.1% 21.7%

自分が気に入った付加価値には対価を払う 

13.0% 22.0%
グラフ:消費者価値観の変化(自分にあったものを求める)、とにかく安くて経済的なものを買う( 50.2% 2000年、34.5% 2015年)、自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ( 22.9% 2000年、31.8% 2015年)、自分のすきなものはたとえ効果でも貯金して買う( 16.1% 2000年、21.7% 2015年)、自分が気に入った付加価値には対価を払う( 13.0% 2000年、22.0% 2015年)

とにかく安いものを買いたいと考える層が減少し、自分の価値観を判断基準にしている層が増加しており、差別化を考えるにおいて重要な要素となっていることは、間違いなさそうです。日本国内でも価値観を重視する傾向が強まっていると言えるでしょう。


2.3 価値観を共有するファンマーケティング

価値観が重視される傾向にあることは理解できたが、では具体的に何をすれば良いのか解らないという方も多いと思います。

 

具体的な対策として、ここでは「ファンマーケティング」をご紹介いたします。ファンマーケティングとは、企業と顧客が価値観を共有する方法として考え出されてたマーケティング手法のひとつです。

 

 

企業が自分たちの理念や信念を全面に押し出し、それに共感する人たちに商品やサービスを提供する。また共感する人たちと直接コミュニケーションをしながら、自社の商品やサービスを育成していく。これによりコアなファンが増加し、クチコミでさらにプロモーションが加速していくというものです。

 

最も有名な例としてApple社が行った「Think Different」というキャンペーンがあります。商品の機能やスペックではなく、自分たちの信念を全面に押し出して、競合他社との差別化を図っています。

 



3. ファンマーケティングの効果


メリットと書かれたメモ帳と赤鉛筆

3.1 売上が向上する

ファンマーケティングを実践すると、いくつかのメリットを享受することができるようになります。

 

「パレートの法則」というものを聞いたことがあると思います。「20:80の法則」などとも呼ばれており、20%の顧客から80%の売上があがるというものです。

 

ファンマーケティングでは、この20%の顧客のロイヤリティーを更に高めて差別化を図り、ファンと呼べるまで関係を強化します。

 

これにより顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)が高まり、経営の安定に大きく寄与します。


3.2 ファンがファンを生み出す

素晴らしい商品やサービス、また想定を超える価値の提供を受けた場合、人はそれを誰かに伝えたくなります。

 

クチコミサイトへの書き込みや、SNSでの情報シェアといった行動に現れることになります。それがクチコミとなって、新たな顧客の獲得に繋がるのです。

 

また積極的に情報を発信してもらえなくとも、友人から聞かれたときには、自社の商品やサービスを推薦してもらえるため、競合他社との差別化が図れます。


3.3 簡単に模倣できない

ファンマーケティングでは、自社の理念や信念に共感して貰える人に対する、商品やサービスのプロモーションを強化することになります。

 

企業の理念や信念をベースに差別化を図りますので、そもそも「模倣する」という行為に馴染まないため、独自性を担保することが可能となります。



4. 誤った差別化戦略を続けると・・・


悩む女性

4.1 安売りのため利益が確保できない

商品の機能やスペックを高めると、必ずそれを模倣する企業が出てきます。一度、模倣合戦が始まると、商品の機能やスペックが似通ったものになり、差別化の要因として成り立たなくなります。そうすると価格でしか差別化ができなくなり、価格競争に陥ることになります。

 

一度、価格競争に陥ると、簡単には事業を立て直すことが出来ません。商品やサービスを提供するには、当然ながらコストがかかります。ギリギリ黒字を保っていたとしても、コスト因子に値動きがあると、簡単に赤字に転落してしまいます。


4.2 新規顧客の開拓に追われ続ける

新規顧客を獲得するために、多大な費用をかけて広告を出して、自社の差別化ポイントを伝えたとしても、直ぐに競合他社へ乗り換えられては業績は向上しません。穴の空いたバケツに水を貯めるようなものです。

 

ファンマーケテイングの関係強化手法で、既存顧客の離脱を最小限に抑えることができれば、効果的に事業規模を拡大することができるようになります。


4.3 従業員のモチベーションが下がる

人は機械ではありませんので、働く環境に大きく影響を受けます。価格競争が激化して、利益が出ない体質になれば、従業員のモチベーションが下がり、新たな差別化戦略をすすめて、業績を回復させようという雰囲気になりません。

 

これは価格競争が激化している商品だけではなく、それ以外の商品にも大きな心理的影響を与えることになります。一度この負のスパイラルに入ってしまうと、簡単には抜け出せなくなり、組織としての力を失うことになります。



5. ファンマーケティングの実践方法


クチコミが発生する構造

5.1 差別化を成功させるための見取り図

ファンマーケティングを進めていくということは「自社が提供する価値に対して、顧客が共感を覚え、それを誰かに伝えたくなる」このような状況を少しでも多く作り出すということでもあります。

 

そのためには、まずクチコミが発生する構造を理解しておく必要があります。このクチコミの構造を、便宜的に6つのステップに分けて解説していきます。


信念:自社の信念を伝えれば価格競争に陥らない

1. 信念:自社の信念を伝えれば価格競争に陥らない

ファンマーケティングにおいて、自社が提供する価値の中核をなすものが、経営者の「信念」です。商品やサービスの機能を中心に価値の訴求を行うと、それを模倣する企業が必ず出てきます。各企業が模倣を始めると商品やサービスの特性が消えてしまい、価格でしか差別化ができなくなります。機能中心の価値訴求をするのではなく、顧客に自分たちの「信念」を伝えて、それに共感する人たちに対して、商品を販売やサービスをプロモーションする必要があります。


ペルソナ:顧客の具体的な人物像を描く

2. ペルソナ:顧客の具体的な人物像を描く

マーケティングの第一歩は顧客を知ることです。どのような特徴があるのかを知らなければ、刺さる提案が出来ないからです。まず顧客データを分析して、どの顧客層に対してプロモーションを行っていくのか検討する必要があります。その後、マーケティング活動を円滑に行うため、顧客の具体的な人物像である「ペルソナ」を設定します。これより、現実味のある提案が可能になります。


埋没課題:顧客の課題を深堀りする

3. 埋没課題:顧客の課題を深堀りする

顧客は何か課題を抱えているために、商品やサービスを購入します。表面的な購買行動だけを見ていては、顧客が抱える課題の本質を見誤ります。ホットの缶コーヒーを購入したのは、のどが渇いたからではなく、寒いのでカイロとして使いたかったのかもしれません。英字新聞を購入したのは、海外のニュースを知りたいのではなく、プレゼント用のラッピングとして使いたかったのかもしれません。顧客の課題を深堀りすることで、顧客が持つ本当の課題を明らかにします。


価値の総和:商品が持つ価値の総和を最大化する

4. 価値の総和:商品が持つ価値の総和を最大化する

一本 3,000円の普通のワインと3万円のブランドワインを飲み比べても、10倍美味しい訳ではありません。1万円の腕時計と100万円の高級腕時計を比べても、100倍美しい訳ではありません。これらの価格差を生む原因は、機能やスペックではなく、顧客が感じる情緒的な価値の差なのです。さまざまな方向から商品が持つ価値を集めて、価値の総和の最大化を図ります。これにより情緒的価値で差別化を図ることが可能になります。


顧客接点:コンタクトポイントの体験が全ての評価を決める

5. 顧客接点:顧客接点の体験が全ての評価を決める

顧客は企業との顧客接点における体験に基づいて、商品やサービスの良し悪しを判定します。営業担当者や販売員の対応はもちろんのこと、コールセンターでの会話や、Webサイトの使い勝手などにも影響を受けます。いかに優れた商品やサービスであったとしても、お客様が顧客接点で嫌な体験をすれば、著しく評価が下がってしまうのです。全ての顧客接点を洗い出し、その全てにおいて高いサービスレベルを保つ方法を検討しなくてはなりません。


伝達:伝えてもらうための販促ツールを準備する

6. 伝達:クロスメディアで情報提供のプロセスを改善する

顧客が商品やサービスを認知して、契約に至るまでのプロセスには、さまざまな顧客接点が存在しています。顧客はこれらの顧客接点を経由して、企業からの情報提供を受け取るわけですが、顧客が必要とする情報は異なります。必要とする情報を必要とするタイミングで顧客に届けるためには、それを支援するための仕組みが必要です。クロスメディアの手法を使って、情報提供のプロセスを改善します。



6. まとめ


笑顔の女性と男女3人

6.1 差別化のポイントは模倣できない独自の価値

差別化戦略で最も難しい部分は、競合他社に模倣されない独自の価値を提供するということです。それを自社のビジネスで実践するにおいて、最も取り組みやすい方法として、今回はファンマーケティングをご紹介しました。

 

全ての顧客から全面的に支持をされる施策を打つのではなく、コアなユーザーにより強く支持されるような施策を打ち、一緒に自社ブランドを育てていくような環境づくりをすることが大切です。