クロスメディアで顧客を増やせ

編笠を持つ女性

宮崎 祥一 / Shoichi Miyazaki

SAS Institute、Avanade、Teradataなどの外資系アナリティクス企業でビジネス開発に携わる。海外で実践されているアナリティクス実用化プロジェクト(購買行動分析、顧客接点分析、需要予測、在庫最適化)を、国内大手企業(流通、小売、飲料、食品、家電、通販)に導入。2011年に株式会社アルファブランディングを設立し、ブランド育成事業を開始。現在に至る。



今日の論点


どうすれば上手く伝えることが出来るのか?

顧客が必要とするタイミングで、タイムリーに情報を届けると顧客満足度が高まります。タイミングを間違えると、逆に不信感を持たれてしまいます。まぁ、契約する直前に商品カタログを持ってこられても、使いみちがないということです。

 

今回はこの情報を提供する精度を向上させるために、「クロスメディア」をご紹介します。

 

 

なお、下記に概略を説明した資料を用意しておりますので、ダウンロードしてご活用下さい。今回の内容は、「クチコミ客を増やす6つのステップ」の6つめの「伝達」です。

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クチコミ客を増やす6つのステップ.pdf
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目次


1. クロスメディアを実施する方法


クロスメディアの概念図

1.1 クロスメディアとはなにか

「クロスメディア」とは、商品やサービスを提案する際に、複数のメディアを使用して情報を提供し、契約に至るまでの手法のことです。

 

顧客が商品やサービスを認知して、契約に至るまでのプロセスには、さまざまな顧客接点があり、その顧客接点ごとに必要とする情報が異なります。

 

仮に顧客が、まだ商品やサービスをよく知らない段階だとすると、このタイミングで必要なものは商品情報です。適切な顧客接点を経由して、カタログやチラシなどを提供する必要があります。しかし、このタイミングで、契約後のアフターサポートの情報は必要ありません。各ステップごとに必要な情報は異なるのです。

 

「必要な情報」を「必要なタイミングで提供」するためのメディア活用手法が、クロスメディアなのです。 


1.1 クロスメディアを実施する5つのステップ

カスタマジャーニーマップ

 

クロスメディアを実施するにあたって、カスタマジャーニーマップを作成する必要があります。これは顧客が商品やサービスを認知して、購入に至るまでのプロセスを図にしたものです。

 

セールスステージ毎にどのような顧客接点があるのか、またその顧客接点ではどのような情報を提供する必要があるのか、それらをビジュアル化する必要があります。

 

カスタマージャーニーマップを作成し、クロスメディアを実施するためには、下記の5つのステップが必要です。

 

1.ペルソナを設定する

自社の顧客を具体的なひとりの人物像まで落とし込んだものを「ペルソナ」と呼びます。まずはじめに、これを準備しましょう。カスタマジャーニーマップに、リアリティを持たせるために必要な作業です。作成方法については、ブログ記事「ペルソナで顧客の課題を絞り込め」をご参照ください。

 

2.購買に至るまでのステップを決める

前段で準備した「ペルソナ」を使います。このペルソナが、どの様なプロセスを経て購入に至るのか、そのプロセスを検討します。上記の図では「認知→情報収集→検討→購入→再購入」としていますが、これにこだわる必要はありません。自社のプロセスに合ったものを設定してください。

 

3.顧客接点をマッピングする

顧客接点とは、顧客が企業と接するポイントのことです。この顧客接点を全て洗い出し、カスタマジャーニーマップにマッピングします。これにより、どのステップで、どのような顧客接点があるのかを把握することができます。顧客接点の詳細については、ブログ記事「競合他社への乗り換えを防止する方法」をご参照ください。

 

4.顧客接点ごとに必要な情報を洗い出す

顧客接点ごとに必要とする情報は異なります。情報収集のステップで契約書の雛形を渡されても困るでしょうし、契約後に商品カタログを渡されても使いみちに困ります。顧客接点ごとに、どのような情報が必要なのかを洗い出してください。

 

5.適切なクリエイティブを用意する

顧客接点ごとに提供するべき情報が決まれば、それに基づいてクリエイティブを制作する必要があります。カタログ、提案書、Webサイトなど、その顧客接点に応じたものを用意してください。

 

以上の5つのステップで、クロスメディアを実施することが出来ます。しかしこれで終わりではありません。このプロセスで問題がないのかを、常にチェックを続ける必要があるのです。



2. クロスメディアを実施する3つのメリット


パソコンでアイデアを思いつく男性

2.1 セールスに必要な時間を短縮することができる

必要な情報を必要なタイミングで提供することができれば、顧客が意思決定に要する工数を、大幅に削減することが出来ます。これによって、購入や契約に至るまでの時間を短縮することができます。

 

また、無駄な情報のやり取りがなくなりますので、一人の顧客にかける時間も短縮・削減することが出来ます。

 


2.2 提案の精度を向上させることができる

顧客接点で必要な情報を提供しても、なかなか次のステップに移行してもらえないことがあります。これは、いま提供している情報だけでは、顧客は意思決定することが出来ず、判断を保留しているということです。

 

逆に言うと、意思決定を下すことができる情報を提供すれば、次のステップへ進めるということですので、提供する情報を見直す必要があります。このプロセスを繰り返していけば、時間とともに提案の精度を向上させていくことが出来ます。


2.3 顧客満足度が高まる

顧客からすれば、常に必要な情報が手元に届くという状態が続くため、意思決定にストレスがかかりません。特に購入や契約に不安を感じるようなタイミングで、それを払拭するような情報をタイムリーに提供すれば、顧客からの信頼度が高まります。

 

このようにストレスなく、購入や契約まで至ることができれば、顧客満足度は高まり、企業に対するロイヤリティーも向上します。



3. まとめ


青い海と砂浜

3.1 次のステップへ進むための方法を考えろ

クロスメディアを実施するのも、そのためにカスタマジャーニーマップを作成するのも、全て契約を受注するためです。

 

セールスステージを確実に前に進めてクロージングするためには、なにが必要なのか。また次のステージに進めないのには、なにが障害になっているのか。これらを考え続ける必要があります。

 

改善できる部分は少しずつかもしれませんが、その精度は確実に上がってきますので、継続することが大切です。