飲食店の売上はバイトで決まる


今日の論点

飲食店を経営する上での悩みは、次の2つに集約されると言って良いでしょう。

 

1つ目はお客様の集客です。これはどの経営者も、毎日のように知恵を絞っていると思います。

 

2つ目は労働力の確保です。アルバイトをどうやって集めてくるのか。どうすれば辞めないで働いてもらえるのか。集客の問題が何とかなったかなぁ・・・と思ったら、この問題が発生します。

 

今回は2つ目の問題である、労働力の確保について考えてみたいと思います。

 



顔写真:宮﨑 祥一/CEO, Alpha Branding Corp.

宮崎 祥一 (Shoichi Miyazaki) / CEO, Alpha Branding Corp.

SAS InstituteAvanadeTeradataなどの外資系アナリティクス企業でビジネス開発に携わる。海外で実践されている AI・アナリティクス実用化プロジェクト(購買行動分析、顧客嗜好分析、顧客接点分析、オムニチャネル分析)を、国内大手企業(流通、小売、飲料、食品、家電)に導入。2011年に株式会社アルファブランディングを設立し、ブランド育成事業を開始。2018年にAR事業をスタートさせ現在に至る。




飲食店の売上はバイトで決まる クチコミ客を増やすブランド戦略 アルファブランディング

「美味しい料理」だけでは売上は改善しない

深刻な人手不足

帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2018 年 1 月)」によると、非正社員の人手が最も不足していると感じている業種は「飲食店」であり、実に「74.3%」にも上っています。2018年以前の調査を見ても、同様の結果が出ており、飲食業界では慢性的に人手不足が続いています。

 

統計情報を見るまでもなく、飲食店の経営者であれば、アルバイトやパートタイマーの確保について、頭を悩ませているでしょう。日本人だけではなく外国人も採用しなければ、現実問題としてお店が回って行かないと感じているはずです。


飲食店は付加価値額が低い

2018年中小企業白書 付加価値額と産業

これは2018年中小企業白書から「中小企業の時間当たり労働生産性」の数値を基に作成したグラフです。

 

他の産業と比較して、飲食サービス業の付加価値額(※)が著しく低いことが解ります。簡単に言うと利益を出しづらい、儲からない産業だと言うことです。

 

従って労働力も正社員ではなく、より賃金の安いアルバイトやパートタイマーと言った非正社員に頼らざるを得ないのです。

 

またせっかく採用しても、賃金が安く人手が不足している売り手市場ですので、嫌な職場であれば直ぐに他のお店に移ってしまいます。

 

採用する側としては、アルバイトの面接に来た人は、取り敢えず採用にして、あとはシフトを組むときに、個別に調整すれば良いと考えているでしょう。

 

(※)付加価値額=労務費+売上原価の減価償却費+人件費+地代家賃+販売費及び一般管理費の減価償却費+従業員教育費+租税公課+支払利息・割引料+経常利益


バイトのポテンシャルは非常に高い

ここでアルバイトやパートタイマーの能力について考えてみましょう。

 

アルバイトの多くは大学や短大に通っている学生です。数年後には社会人となって、この日本を支えていく人材となります。ポテンシャルは非常に高いと言えます。

 

またパートタイマーの多くは主婦です。彼女たちの多くが家庭に入る前は、社会人としてバリバリ仕事をしていたのです。当然、新入社員研修を始めとした、各種のトレーニングを受けてきています。こちらはポテンシャルに加えて、基礎的なトレーニングも既に完了しているのです。

 


美味しい料理だけで評価は上がらない

しっかりと仕事を教えて、やりがいを感じる環境を整えさえすれば、アルバイトやパートタイマーはあなたの想像を超える働きを見せるのですが、多くのお店の場合、それが出来ていません。

 

なぜかというと、経営者であるあなたが「美味しい料理を出していれば、お店は繁盛する」と考えているからです。

 

仮にあなたがイタリアン・レストランのオーナーシェフだとしましょう。あなたは知恵を絞って、季節ごとにさまざまな料理を提供しています。そこであなたはこう思う。

 

「お客様は、私の作る美味しい料理を食べに来ている」

 

残念ながら、その仮説は正しくありません。隅のテーブルに座っている若いカップルは「デート」をするために来店していますし、中央のテーブルに座っている家族は「誕生日のお祝い」で来店しています。あなたの作る「美味しい料理」は、「デート」や「誕生日のお祝い」を構成する要素のひとつでしかないのです。

 

美しく磨き上げられたグラス、親しみやすいウエイトレス、綺麗に清掃されたトイレ、丁寧なお見送り・・・その他にも構成要素はたくさんあります。

 

そうです、これらを準備してお客様へ提供しているのは、アルバイトとパートタイマーなのです。


バイトへのトレーニングこそが成功の鍵

アルバイトやパートタイマーが、いかに顧客の満足度に寄与するのか、ご理解いただけたと思います。では、どのように教育すればいいのでしょうか。

 

作業の手順などのトレーニングは、いままで通りで問題ありません。重要なことは、仕事に対するモチベーションの管理です。モチベーションを高めるためのトレーニングが必要なのです。自分で考えて自分で行動するための、環境作りが大切なのです。 

 

店長から指示をされて嫌々やる仕事と、自分で考えて自分で行動する仕事とを比較すると、どちらのクオリティが高いのかは言うまでもありません。自分で考えて自分で行動する。これはとても大切なことです。

 

ただこれは何でも好き勝手にやらせていいと言うことではありません。お店として守ってもらう指針は明確にしておく必要があります。その指針に基づいて判断・行動してもらうのです。

 

具体的にはクレドを作成することをお薦めします。クレドとはラテン語で「信条」のことです。最近では多くの企業が採用しているので、聞いたことがあるかもしれません。マニュアルのようにケースごとの対応方法が書かれているのではなく、考え方や判断基準が書かれた小さなカードです。

 

マニュアルには誰にでもできることが書かれています。そこに書かれていることを実行しても、ヤル気は起きないのです。一方、クレドには指針しか書かれていません。その指針に基づいて、自分で考えて自分で行動する。このことがヤル気を生むのです。