宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー
Honeywell、Experian、Teradata、Avanade、SAS Institute などの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。
今日の論点
顧客と長期的な信頼関係を築くには
企業にとって、新しいお客様を獲得することは非常に重要です。しかし、実際のビジネスの成功は、その新しいお客様を長期的なお得意様に変えることにかかっています。ここで鍵となるのが「顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)」です。
顧客生涯価値とは、お客様が生涯を通じて企業にもたらす総収益を示す指標です。顧客生涯価値を理解し活用することで、一度きりの購入者を、何度もリピートしてくれるお得意様に変えることができます。
このブログでは、顧客生涯価値の基本的な概念から、その計算方法、そして顧客生涯価値を活用して新しいお客様をお得意様に変える具体的な方法について、わかりやすく解説します。
まぁ簡単に言うと、常連客を増やしましょうということなのですが、これが思いのほか難しい。今回は顧客と長期的な信頼関係を構築するには、どうすればよいのかについて、一緒に考えていきましょう。
目次
1.1 顧客生涯価値とは?
1.2 顧客生涯価値が注目される背景
2. 顧客生涯価値の具体的な活用事例
2.1 具体的な活用事例:Starbucks
3. 顧客生涯価値:ここを押さえろ!
3.1 新規顧客獲得コストと初回3回の体験
4. 顧客生涯価値のの実装ステップ
4.1 実装の基本的な考え方
4.2 実装するための具体的なステップ
5. 顧客生涯価値に関するメリットとデメリット
5.1 メリット
5.2 デメリット
6. まとめ
6.1 顧客生涯価値の今後について
1. 顧客生涯価値とは何か?
1.1 顧客生涯価値とは?
顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)とは、顧客が企業にもたらす収益の総額を示す指標です。具体的には、顧客が初めて取引を行ってから最後の取引までの期間において、得られる利益を現在価値で割り引いたものです。顧客生涯価値を高めることで、企業は長期的な利益を確保できるため、経営の安定化にとても重要です。
/ 顧客生涯価値の歴史と発展 /
顧客生涯価値の概念は、1960年代から1970年代にかけてマーケティングの分野で徐々に浸透していきました。当初は、顧客の将来的な利益を予測し、それに基づいてマーケティング施策や予算の割り当てを行う手法として提案されました。
その後、1980年代に入るとデータベースマーケティングの発展と共に、顧客情報を分析する技術が向上しました。また、インターネットの普及や電子商取引の発展により、顧客データの収集が容易になり、企業はこれらを活用してより効果的なマーケティング施策を実施できるようになりました。
/ 顧客生涯価値を理解するための用語 /
顧客生涯価値をより深く理解するために、いくつかの重要な用語を説明します。
顧客生涯価値(CLV):顧客生涯価値(CLV)は、顧客が生涯を通じて企業にもたらす総収益です。これは、顧客が1回の購入で支払う平均額、購入頻度、そして顧客が企業と関係を維持する期間に基づいて計算されます。
顧客獲得コスト(CAC):顧客獲得コスト(CAC)は、新規顧客を獲得するために企業が支払ったコストです。これには、マーケティング、広告、セールスなどの費用が含まれます。
純顧客生涯価値(Net CLV):純顧客生涯価値(Net Customer Lifetime Value, Net CLV)とは、顧客生涯価値(CLV)から顧客獲得コスト(CAC)を差し引いた金額です。この値は、顧客一人あたりが企業にどれだけの純利益をもたらすかを示します。
ざっくり説明すると、購入金額、購入頻度、購入期間が分かれば、顧客が企業にもたらす総収益を計算できます。そこから顧客を獲得するために支払った金額を引けば、顧客が企業にもたらす利益、つまり純顧客生涯価値が分かるということです。
これらの概念を理解することで、企業はより効果的なマーケティング戦略を立て、長期的な成長と利益の最大化を目指すことができます。
1.2 顧客生涯価値が注目される背景
顧客生涯価値は経営の安定化にはとても重要であり、下記の背景によって近年注目を集めています。
1. 購買行動の変化: 近年、消費者は商品やサービスの価格や品質ではなく、企業の価値観を重視するように変化しています。そのため企業は顧客との長期的な関係を構築するために、顧客生涯価値の考え方をマーケティング戦略に取り入れるようになりました。
2. 企業と顧客との距離が接近:インターネットの普及により、顧客は商品やサービスに関する情報を容易に手に入れることができるようになりました。企業と顧客の距離が縮まったため、顧客は企業の信頼度や価値観に敏感になり、企業側としては顧客との信頼関係を深めることが急務となりました。
3. データ分析技術の進化:データ分析技術の進化により、企業は顧客の購買履歴や属性に関するデータを、容易に分析できるようになりました。これにより顧客生涯価値をシミュレーションし、マーケティング施策に活用する機運が高まりました。今後はAIの発展により、さらなる最適化が図られるものと予想されています。
顧客生涯価値が注目を集めているのは、これらの要因だけではありませんが、いずれにせよ企業に取って重要な概念であることに違いはありません。企業は顧客生涯価値を常に念頭に置いてマーケティング施策を立案することが求められています。
2. 顧客生涯価値の具体的な活用事例
2.1 具体的な活用事例:Starbucks
顧客生涯価値を使った成功事例としてStarbucksを紹介します。
/ 背景 /
Starbucksは、世界中に展開するコーヒーチェーンとして、顧客との長期的な関係を築くことを重視しています。競争の激しい市場での差別化を図るために、顧客体験の向上とロイヤルティプログラムの強化に注力してきました。特に、顧客生涯価値(CLV)を最大化する戦略を展開し、顧客のリピート率と満足度を高めることに成功しています。
/ 戦略 /
1. Starbucks Rewards プログラム
ポイントシステム: Starbucks Rewardsプログラムでは、顧客が購入するたびにポイント(スタース)が貯まり、一定のポイントを集めると無料のドリンクやフードアイテムと交換できる仕組みを導入しました。このインセンティブにより、顧客のリピート購入を促進しています。
特典の提供: 誕生日特典やメンバー限定のプロモーション、早期アクセスなど、リワードメンバーに特別な特典を提供することで、顧客の満足度とロイヤルティを高めています。また、季節限定のメニューやカスタマイズドドリンクの無料提供なども行い、顧客の期待を超えるサービスを提供しています。
2. モバイルアプリ
簡単な注文と支払い: Starbucksのモバイルアプリは、顧客が簡単に注文と支払いができるように設計されています。顧客はアプリを使って事前に注文を行い、店舗で待たずに受け取ることができ、レジでの待ち時間も短縮されます。また、デジタルウォレット機能を搭載しており、キャッシュレスでの支払いが可能です。
個別のオファー: アプリを通じて、顧客の購入履歴や嗜好に基づいた個別のオファーやプロモーションを提供しています。例えば、新商品の割引クーポンや、お気に入り商品のポイント倍増キャンペーンなど、顧客一人ひとりに合ったオファーを送ることで、購入頻度と平均購入金額を増やしています。
3. パーソナライゼーション
パーソナライズドマーケティング: Starbucksは顧客データを分析し、個々の嗜好や行動に基づいたマーケティングメッセージを送信しています。特定の商品に関するクーポンや、新商品情報を顧客に合わせて提供するなど、パーソナライズされた体験を提供することで、顧客のエンゲージメントを高めています。
フィードバックの活用: 顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それを基にサービスや商品の改善を行っています。例えば、顧客が好むフレーバーの導入や、店舗環境の改善など、顧客のニーズに応える取り組みを強化しています。
/ 成果 /
顧客ロイヤルティの向上: Starbucks Rewardsプログラムにより、多くの顧客がリピーターとなり、継続的に店舗を利用するようになりました。特典やポイントシステムが顧客にとって魅力的なインセンティブとなり、長期的な関係を築くことができています。
売上の増加: モバイルアプリの導入により、顧客の利便性が向上し、注文回数が増加しました。さらに、個別のオファーにより顧客の購入金額が増加し、全体的な売上も向上しました。特に、アプリ経由の売上は全体の30%以上を占めるようになり、顧客のアプリ利用率の高さが売上増加に寄与しています。
データ活用による効率的なマーケティング: 顧客データを活用することで、より効果的なマーケティングキャンペーンを展開できるようになりました。パーソナライズドマーケティングにより、顧客一人ひとりに最適なメッセージを届けることが可能となり、マーケティングの効果が向上しました。また、マーケティングROI(投資対効果)が大幅に改善されました。
/ 成功要因 /
リワードプログラムの魅力: ポイントシステムや特典提供による顧客インセンティブの強化が、顧客ロイヤルティを高めました。顧客がスターバックスを選び続ける理由となり、リピート率の向上に寄与しています。
テクノロジーの活用: モバイルアプリを活用した注文・支払いの利便性向上と個別のオファー提供が、顧客体験を向上させ、リピート率を高めました。アプリの直感的なデザインと使いやすさも、顧客の満足度を高める要因となっています。
データドリブンのマーケティング: 顧客データを基にしたパーソナライズドマーケティングが、顧客満足度と購入頻度の向上に寄与しました。データ分析により、顧客のニーズや行動を的確に把握し、タイムリーかつ関連性の高いオファーを提供することが可能になりました。
フィードバックの重視: 顧客の声を積極的に収集し、それを基にサービスや商品の改善を行うことで、顧客のニーズに応え、満足度を向上させました。顧客とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことが成功の鍵となっています。
Starbucksは、これらの戦略を通じて顧客生涯価値を最大化し、競争の激しい市場での成功を収めています。顧客中心のアプローチとテクノロジーの活用が、長期的な成長と利益の拡大に大きく貢献しています。
3. 顧客生涯価値:ここを押さえろ!
3.1 新規顧客獲得コストと初回3回の体験
顧客生涯価値(CLV)を最大化するためには、いくつかの重要な要素がありますが、中でも特に重要なのが以下の2つです。
1. 新規顧客獲得コストの削減
新規顧客を獲得するためのコスト(CAC)は、既存顧客に再度商品を購入してもらうためのコストの約5倍と言われています。新規顧客を獲得するためには、多額のマーケティング費用や広告費用がかかる一方、既存顧客に対するリピート購入の促進は、比較的低コストで実現できます。このコスト差を理解し、既存顧客のリテンション(保持)に注力することで、企業は効率的に利益を上げることができます。
2. 初回3回の体験の重要性
顧客を常連客にするためには、最初の3回の体験が非常に重要です。この最初の3回の間に顧客が満足し、良い印象を持つことができれば、顧客は自分自身を馴染み客と感じるようになります。これにより、リピート購入の可能性が大幅に高まり、長期的な関係を築くことができます。
具体的には、以下のような施策が効果的です:
初回特典や割引の提供: 初めての購入時に特別な特典を提供し、再度の利用を促進します。
優れたカスタマーサービス: 初回から丁寧で親切な対応を行い、顧客の満足度を高めます。
パーソナライズド体験の提供: 顧客の嗜好に合わせた提案を行い、特別感を演出します。
フォローアップの徹底: 初回利用後のフォローアップを行い、顧客との関係を強化します。
顧客生涯価値を最大化するためには、新規顧客獲得コストの高さと初回3回の体験の重要性をしっかりと理解し、それに基づいた戦略を展開することが必要です。既存顧客のリピート購入を促進し、初回3回の体験で顧客の満足度とロイヤルティを高めることで、企業は持続的な成長と利益の拡大を実現することができます。
4. 顧客生涯価値の実装ステップ
4.1 実装の基本的な考え方
顧客生涯価値をマーケティングに活用する際に、下記4点に留意して進めることをお勧めします。
1. 顧客の課題に対する理解と対応:顧客に対するアンケートやインタビューを通じて、顧客の課題や悩みを把握することが大切です。また、SNSの投稿やレビューサイトの情報なども分析対象とすれば、より精度の高い顧客理解が得られます。
2. 顧客とのコミュニケーションを強化:企業と顧客との間のコミュニケーションを重視することで、深い信頼関係を築くことができます。特にSNSはインタラクティブに情報交換が可能なので、積極的に活用することが大切です。また顧客からの意見を商品開発に取り入れることも忘れてはなりません。
3. 顧客ロイヤリティプログラムの導入:顧客ロイヤリティプログラムを導入することで、リピート購入を促進し、顧客生涯価値を高めることができます。ポイント制度や会員特典など、ターゲット顧客が魅力と感じるプログラムを提供することが大切です。
4. パーソナライゼーションの実施: データ分析やAIを活用して、顧客の購買履歴や嗜好を把握し、顧客ごとにパーソナライズされたプロモーションを行うことで、顧客からの信頼度を高めることができます。
これらの基本戦略を取り入れることで、顧客生涯価値を高めることが可能となります。もちろん、自社の商品やサービス、またターゲット層に合わせたプロモーションが必要です。プロモーションについては効果測定を定期的に実施して、改善に努めることが大切です。
4.2 実装するための具体的なステップ
実装するための具体的なステップを見ていきましょう。プロジェクトがすでに始まっている方に向けて、詳細な手順を説明します。これから検討を始める方は、このセクションを斜め読みするか、読み飛ばしていただいても構いません。
/ 計画フェーズ (Planning Phase) /
1. 目標設定: 顧客生涯価値(CLV)を導入する目的と目標を明確に設定します。例えば、顧客のロイヤルティ向上、リピート購入率の増加、マーケティングROIの改善、顧客満足度の向上など、具体的な成果を見据えた目標を設定します。
2. 現状分析: 現在の顧客データ、マーケティング戦略、顧客維持施策を詳細に分析し、CLVを導入するためのギャップや改善点を特定します。これには、顧客の購買履歴、行動データ、顧客フィードバックなどの収集と評価が含まれます。
3. リソース計画: CLVの導入に必要な人材、技術、予算を計画します。特にデータ分析の専門家、マーケティング担当者、適切な分析ツールやソフトウェアの導入が重要です。また、必要なトレーニングや研修の計画も含めます。
4. タイムライン設定: 各フェーズの具体的なスケジュールを設定し、プロジェクトの進行を管理するためのタイムラインを作成します。これにより、各ステップが計画通りに進行し、目標達成に向けて効果的に進めることができます。
/ 準備フェーズ (Preparation Phase) /
5. データ収集: 顧客の購入履歴、行動データ、マーケティングデータを体系的に収集します。データの質と量を確保するためのシステムやプロセスを整備し、必要なデータが漏れなく収集されるようにします。
6. データクレンジング: 収集したデータを整理し、重複データや不正確なデータを取り除きます。これにより、分析の精度を高め、正確なインサイトを得ることができます。
7. 分析ツールの導入: CLVの計算やデータ分析に必要なツールやソフトウェアを導入します。CRMシステムやBIツール、データ分析プラットフォームなど、データの収集、分析、可視化をサポートするツールを選定し、導入します。
8. チームのトレーニング: データ分析チームやマーケティングチームに対して、CLVの概念や分析方法に関するトレーニングを実施します。これにより、チーム全体が共通の理解を持ち、効果的にプロジェクトを進めることができます。
/ 実施フェーズ (Execution Phase) /
9. CLVの計算: 収集したデータを基に、各顧客のCLVを計算します。平均購入額、購入頻度、顧客存続期間を考慮して、CLVのモデルを作成し、各顧客の価値を定量化します。
10. セグメンテーション: CLVに基づいて顧客をセグメント化し、各セグメントに最適なマーケティング戦略を策定します。例えば、高価値顧客には特別なオファーやロイヤルティプログラムを提供し、低価値顧客にはエンゲージメントを高めるための施策を講じます。
11. マーケティング施策の実行: セグメントごとに策定したマーケティング施策を実行します。パーソナライズされたオファーやリワードプログラム、メールキャンペーン、ソーシャルメディアキャンペーンなどを実施し、顧客エンゲージメントを高めます。
12. フィードバックループの確立: 実施した施策の効果を定期的にフィードバックし、必要に応じて戦略を修正します。顧客の反応や行動を継続的にモニタリングし、施策の改善点を特定します。
/ モニタリングフェーズ (Monitoring Phase) /
13. KPIの設定と追跡: CLVの向上に関連する主要な指標(KPI)を設定し、定期的に追跡します。例えば、リピート購入率、顧客維持率、マーケティングROI、顧客満足度など、CLVに直結する指標をモニタリングします。
14. 効果測定: 実施したマーケティング施策の効果を測定し、CLVの変化を分析します。成功事例や改善点を特定し、ベストプラクティスを導入します。これにより、次回以降の施策に反映し、さらに効果的なアプローチを追求します。
15. 継続的改善: データ分析と効果測定に基づいて、マーケティング戦略や顧客対応を継続的に改善します。新たな施策の導入や既存施策の最適化を行い、CLVの向上を図ります。
16. レポートと共有: CLVの導入結果や学びを社内で共有し、全社員が顧客中心の考え方を理解し、実践できるようにします。定期的な報告書やミーティングを通じて、情報を共有し、組織全体でCLVの重要性を認識します。
顧客生涯価値の考え方を企業に取り入れることで、長期的な顧客関係の構築と収益の最大化が期待できます。計画、準備、実施、モニタリングの各フェーズを通じて、継続的な改善と効果的なマーケティング戦略を実現することが重要です。このプロセスを通じて、企業は顧客ロイヤルティを高め、競争力を強化し、持続可能な成長を達成することができます。
5. 顧客生涯価値に関するメリットとデメリット
5.1 メリット
1. リピート購入の増加: 顧客生涯価値を軸としたマーケティング施策を実施することで、顧客の課題に応え、顧客満足度を高めることにつながります。これによりリピート購入が増加し、企業の利益確保が可能となります。
2. 長期的な利益の確保:顧客生涯価値を高めることによって、顧客は商品やサービスを継続的に購入することつながります。これにより企業は長期的な利益を確保し、経営の安定を図ることが可能となります。
3. 口コミによる新規顧客の獲得:商品やサービスに対して満足度が高い顧客は、自分の知人や友人に対して、自発的にそれらを勧めることがあります。口コミでの新規顧客の獲得は、通常の広告などと比較して、高い効果が期待できます。また広告費用も不要であるため、利益の確保にもつながります。
4. ブランドイメージの向上:顧客生涯価値を軸としたマーケティング施策を実施することとで、企業のビジョンや価値観を顧客と共有することができ、ブランドイメージの向上に役立ちます。ブランドイメージが高まると、顧客がそのブランドを選択する機会が増え、企業の収益改善にもつながります。
これらのメリットを最大限に活かすには、顧客の課題や悩みを解決するような商品やサービスの開発が必要です。顧客とのコミュニケーションを重視し、顧客からのフィードバックを商品開発に活かすことが大切です。これにより企業は、長期的な利益を確保することができるのです。
5.2 デメリット
1. マーケティング費用の増加:顧客生涯価値を高めるためのマーケティング施策には、データ分析基盤の強化、CRMの導入、ロイヤルティプログラムの実施など、多額の費用を必要とするものがあります。また、初期投資だけではなくランニングコストも必要となるため、綿密なビジネスプランが必要とされます。
2. 過剰な顧客依存:顧客生涯価値を重視するあまり、一部の顧客に対する依存度が高まり過ぎるリスクがあります。市場の変化や競合他社の動向などによって、その顧客が離れてしまった場合、企業として大きなダメージを受けることになります。
3. トレンドへの対応が遅くなる:顧客生涯価値を重視したマーケティング活動は、既存の顧客の満足度を重要視するために、新たなトレンドや、そのターゲット層に対する対応
が遅れてしまう傾向にあります。これによって、競合他社に市場を奪われることになるリスクがあります。
顧客生涯価値をマーケティングに活用することは、メリットもデメリットも存在します。企業は自社の商品やサービスを十分考慮した上で、マーケティング戦略を立案することが大切です。
6. まとめ
6.1 顧客生涯価値の今後について
データ分析の進化やAIの活用などによって、よりパーソナライズされたコンテンツを提供することができるようになると予想されています。
またオンラインとオフラインを融合するようなオムニチャネル戦略も、注目を集めており、顧客生涯価値を高めることに寄与しています。今後も顧客生涯価値を高めるマーケティング施策は、重要視され続けるでしょう。
ただメリットとデメリットがありますので、マーケティング戦略の立案には細心の注意が必要です。企業が継続的かつ長期的に利益を確保するためには、この顧客生涯価値を高めるマーケティング施策は必須だといえるでしょう。