インフルエンサーマーケティングの始め方

パソコンを前にして打ち合わせをする男女のビジネスマン

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際的企業において、アナリティクスサービスのビジネス開発を担当。海外で実績を積んだ最先端のアナリティクス手法を、日本の主要企業に導入。ハイテク、金融、医薬、通信、家電、流通、小売、飲料、食品、通販業界など、幅広い分野の企業に対する支援を行う。アナリティクスの適用範囲は、マーケティング分析、リスク管理、品質管理、需要予測、在庫最適化など多岐にわたる。データ分析とブランド構築の戦略を融合させる新しいアプローチを提供するため、株式会社アルファブランディングを創業。価格競争に陥らない強固なブランド構築をサポートしている。

宮崎祥一のプロフィール写真


今日の論点


急速に拡大するインフルエンサーマーケティング

みなさんインフルエンサーマーケティングってご存じでしょうか。インターネットの有名人に商品の宣伝をしてもらうマーケティング手法です。実際にやったことがある人はまだ多くないと思いますが、YouTubeなどで、下記のセリフをよく聞きますよね。

 

「○○社よりレビューを依頼されています」

「△△社から商品をお借りしています」

「××社から案件が来た~~~っ!」

 

みたいな感じのヤツです。

 

Covid-19によって自宅待機やリモートワークが増えたために、インターネットにアクセスする時間も増え、インフルエンサーマーケティングに取り組む企業が急増しています。

 

今回はこのインフルエンサーマーケティングのお話です。前回のオーセンティックマーケティングに引き続き・・・名称が長い (TT) 



目次


1. インフルエンサーマーケティングとは?


カフェで笑顔で振り向く青い服を着た眼鏡の女性

1.1 インフルエンサーマーケティングとは何か?


インフルエンサーマーケティングとは、ソーシャルメディアやブログなどのオンラインプラットフォームで高いフォロワー数や影響力を持つ人物(インフルエンサー)を活用して、特定のブランドや製品のプロモーションを行うマーケティング手法です。

 

このインフルエンサーマーケティングは、2000年代初頭に誕生したと言われています。当初は、ブログを中心に活動していたインフルエンサーが、自分の好きなものやオススメの商品を紹介することで広がりを見せました。その後、SNSやYouTubeの普及により、より多くの人々に影響力を持つインフルエンサーが現れ、インフルエンサーマーケティングの需要が増加しました。

 

インフルエンサーは、自身の信頼や影響力を利用して、フォロワーに対してブランドや製品の情報を発信し、その購買行動に影響を与えることを目指します。現代のデジタルマーケティング戦略において、インフルエンサーマーケティングは欠かせない存在となっており、多くの企業がその効果を実感しています。

 


1.2  なぜ注目を集めているのか?


いまインフルエンサーマーケティングが注目を集めている背景には、いくつかの要因があります。

 

1. ソーシャルメディアの普及: ソーシャルメディアの普及により、個人が簡単に大量のフォロワーを持つことができるようになりました。これにより、インフルエンサーは大規模なオーディエンスに直接リーチできる強力な媒体となっています。Facebook、Instagram、YouTube、TikTokなどのプラットフォームは、特に若年層を中心に非常に高い利用率を誇り、企業にとっても重要なマーケティングチャネルとなっています。

 

2. 従来の広告手法の限界: 消費者は従来の広告に対する感度が低下し、広告ブロッカーの利用が増加しています。その一方で、インフルエンサーが提供するコンテンツは、広告的な色彩を抑え、信頼性や親近感を持たせることができるため、消費者に受け入れられやすいという特徴があります。

 

3. 消費者の購買行動の変化: 消費者は製品やサービスを選ぶ際に、第三者のレビューや推薦を重視する傾向が強まっています。インフルエンサーが信頼できる情報源として位置づけられることにより、彼らの推薦は消費者の購買意思決定に大きな影響を与えることができます。

 

4. ターゲット層への的確なリーチ: インフルエンサーは特定のニッチ市場や興味を持つフォロワーを持っていることが多いため、企業が狙う特定のターゲット層に効果的にリーチすることができます。これにより、マーケティング活動の精度が向上し、より高いROIが期待できます。

 

5. コンテンツの多様化と創造性の向上: インフルエンサーは自身のスタイルや創造性を活かして、魅力的なコンテンツを作成する能力があります。これにより、企業は多様で質の高いコンテンツを通じて消費者とのエンゲージメントを高めることができます。

 

6. データ分析と測定の進化: デジタルプラットフォームの進化により、インフルエンサーマーケティングの効果を詳細に分析し、測定することが可能になりました。これにより、企業はキャンペーンの成果を正確に評価し、戦略を調整することができます。

 

 

これらの要因の中でも特に「従来の広告手法の限界」、消費者が広告を拒絶する傾向が、インフルエンサーマーケティングの普及に大きく寄与したのだと思います。



2. インフルエンサーマーケティングの基本戦略


Stragegyと書かれたパズルのピース

2.1 実践するための具体的なステップ


インフルエンサーマーケティングを企業が実践する際の具体的なステップを見ていきましょう。

 

/ 計画フェーズ (Planning Phase) /

1. 目標設定: キャンペーンの目的を明確にし(例:ブランド認知度の向上、売上の増加、新製品のプロモーションなど)、KPI(重要業績評価指標)を設定して成功を測定する基準を決めます。


2. ターゲットオーディエンスの特定: インフルエンサーのフォロワー層がブランドのターゲット層と一致するように、詳細なペルソナを作成し、ターゲット層のニーズや興味を理解します。


3. 予算設定: キャンペーンの予算を決定し、インフルエンサーの報酬、広告費、コンテンツ制作費用などを考慮に入れます。

 

 

/ 準備フェーズ (Preparation Phase) /

4. インフルエンサーの選定: ブランドの価値観やターゲット層に合ったインフルエンサーをリストアップし、フォロワー数、エンゲージメント率、過去のコラボレーションの実績などを評価します。


5. コンタクトと契約: 選定したインフルエンサーにアプローチし、キャンペーンの詳細を共有します。合意に至った場合、契約書を作成し、報酬や納期などの条件を明確にします。


6. コンテンツの企画: インフルエンサーと協力して、キャンペーンのメッセージやコンテンツの方向性を決定し、コンテンツカレンダーを作成して投稿のタイミングや頻度を計画します。

 

 

/ 実施フェーズ (Execution Phase) /

7. コンテンツ制作: インフルエンサーがコンテンツを制作し、ブランドにレビューとフィードバックを行います。必要に応じて、コンテンツの修正を依頼します。


8. 投稿とプロモーション: 計画に沿ってインフルエンサーがコンテンツを投稿し、ブランドの公式アカウントでもコンテンツを共有して相乗効果を高めます。


9. インタラクションの促進: フォロワーとのエンゲージメントを高めるために、コメントやメッセージへの対応を行い、コンテストやハッシュタグキャンペーンなどを実施して参加を促します。

 

 

/ モニタリングフェーズ (Monitoring Phase) /

10. パフォーマンスの追跡: 設定したKPIに基づいて、キャンペーンのパフォーマンスをリアルタイムで追跡し、インフルエンサーの投稿に対するエンゲージメント率、リーチ、コンバージョン率などを分析します。


11. フィードバック収集: インフルエンサーおよびフォロワーからのフィードバックを収集し、今後のキャンペーンの改善点を特定します。


12. レポート作成: キャンペーンの成果をまとめたレポートを作成し、成果と改善点を報告し、次回のキャンペーンに活かす戦略を立てます。

 

 

企業それぞれ置かれている状況が異なりますので、上記のプロセスをそのまま実施する必要はありません。自社向けに修正をした上でプロジェクトを進めてください。



3. インフルエンサーマーケティングの活用事例


手のひらで洗顔料を泡立てているところ

3.1 具体的な活用事例:Glossier


インフルエンサーマーケティングの成功事例としてGlossierを紹介します。

 

/ 背景 /

Glossierは2014年に創立されたスキンケアおよび化粧品ブランドで、創業者のエミリー・ワイスが美容ブログ「Into The Gloss」の成功を基に設立しました。Glossierは「顧客の声を反映した製品作り」をコンセプトに掲げ、初期からインフルエンサーマーケティングを活用してブランドを成長させました。

 

 

/ 戦略 /

Glossierのインフルエンサーマーケティング戦略は、以下の要素に基づいています。

 

ターゲットオーディエンスの特定: 美容ブロガーやマイクロインフルエンサーを中心に、ブランドの価値観やメッセージを共有できるインフルエンサーを選定し、ターゲット層にリーチしました。

 

リアルなレビューの依頼: 製品をインフルエンサーに提供し、使用感やレビューをSNSで共有してもらうことで、信頼性の高いコンテンツを生成し、消費者の購買意欲を高めました。

 

ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用: 顧客が自身のSNSで製品を紹介することを奨励し、そのコンテンツを公式アカウントでリポストすることで、コミュニティを形成し、顧客とのつながりを強化しました。

 

継続的なエンゲージメント: インフルエンサーとの関係を長期的に維持し、定期的に新しいキャンペーンやコラボレーションを展開することで、ブランドとの持続的な関係を構築しました。

 

 

/ 成果 /

Glossierのインフルエンサーマーケティング戦略は、短期間で大きな成果を上げました。

 

ブランド認知度の向上: インフルエンサーの投稿を通じて、ブランドの認知度が急速に広がり、多くの消費者にアプローチできました。

 

顧客基盤の拡大: 美容に興味を持つ多くの新規顧客を獲得し、リピーター率の高い忠実な顧客基盤を築くことに成功しました。

 

売上の増加: 製品のレビューや使用感を共有するコンテンツが購買意欲を高め、売上の増加に繋がりました。特に、インフルエンサーの影響力を活用することで、購買行動に直結する結果を生み出しました。

 

強いコミュニティの形成: 顧客との強いエンゲージメントを持つコミュニティが形成され、ブランドロイヤルティが向上しました。このコミュニティは、顧客が自発的にブランドを支持し、友人や家族にも薦めるという連鎖的な効果を生み出しました。

 

 

/ 成功要因 /

Glossierの成功要因は以下の通りです。

 

顧客中心のアプローチ: 顧客の声を製品開発やマーケティング戦略に反映させたことで、消費者との信頼関係を構築しました。このアプローチは、顧客がブランドに対して親近感を持ち、ブランドとの長期的な関係を築く基盤となりました。

 

多様なインフルエンサーの活用: 美容ブロガーやマイクロインフルエンサーなど、多様なインフルエンサーを活用することで、広範なターゲット層にリーチし、ブランドメッセージを効果的に伝えました。

 

透明性と信頼性の確保: リアルなレビューやユーザー生成コンテンツを活用することで、消費者からの信頼を得ました。透明性を重視することで、顧客は製品やブランドに対する信頼感を高めました。

 

持続的なエンゲージメント: インフルエンサーとの継続的な関係構築と定期的なキャンペーン展開により、長期的なブランド成長を実現しました。これにより、ブランドの継続的な露出と新規顧客の獲得が促進されました。

 

 

Glossierの成功事例は、顧客の声を重視し、インフルエンサーマーケティングを効果的に活用することで、ブランドの認知度と売上を大幅に向上させることができることを示しています。



4. インフルエンサーマーケティングのメリットとデメリット


メリットとデメリット

4.1 インフルエンサーマーケティングのメリット


まずはじめに、インフルエンサーマーケティングのメリットを見ていきましょう。インフルエンサーマーケティングを実施することには、以下のようなメリットがあります。

 

1. ターゲット層にアプローチしやすい:自社の商品やサービスのターゲット層に近いインフルエンサーを見つけることができれば、かなりの効果が期待できます。また既にインフルエンサー自身がフォロワーとの信頼関係を築いているため、商品やサービスへの興味を引きやすく、購買意欲が高まる可能性があります。

 

2. 認知度や信頼性の向上:インフルエンサーは、フォロワー層から信頼されているため、彼らが自社の商品やサービスを紹介することで、商品やサービスの認知度が向上するとともに、信頼性も高まる可能性があります。

 

3. ソーシャルメディアでの露出増加:インフルエンサーとのコラボレーションにより、ソーシャルメディアでの露出が増加し、ターゲット層に直接アピールすることができます。特に若年層を中心に、ソーシャルメディアが情報収集の主要な手段となっているため、インフルエンサーマーケティングは効果的な方法です。

 

4. コストパフォーマンスが高い:インフルエンサーマーケティングは、従来の広告媒体と比べて、コストパフォーマンスが高いとされています。特に、中小企業や新興企業がブランド認知度を高めるために利用することが多く、少ない予算でも効果的なマーケティングが可能です。

  

以上のように、インフルエンサーマーケティングは、ターゲット層にアプローチしやすく、認知度や信頼性の向上、ソーシャルメディアでの露出増加、コストパフォーマンスの高さなど、多くのメリットがあります。


4.2 インフルエンサーマーケティングのデメリット


インフルエンサーマーケティングを実施する際には、それが引き起こすデメリットも事前に検討しておかなければなりません。およそ4つの問題の発生が予想されます。

 

1. フォロワーへの告知の問題:インフルエンサーが広告を出稿していることが明示されていない場合、消費者は広告と認識できないため、信頼性の低い情報として受け止める可能性があります。また、インフルエンサーが自分自身の意見として紹介している商品について、実際に利用しているかどうかが疑問視されることもあります。

 

2. コストの問題:有名なインフルエンサーは広告料が高額になる傾向があります。また、インフルエンサーに商品を提供する際にも、商品のコストがかかるため、コスト面での課題が生じる可能性があります。あと、フォロワー数が同じ程度であっても、広告料には大きな差がある場合が少なくありませんので注意が必要です。自社の商品やサービスに合致したフォロワーを持つインフルエンサーを見つけることが大切です。

 

3. 効果測定の問題:これはインフルエンサーマーケティングに限ったことではありませんが、マーケティングの結果を正確に測定することが難しい場合があります。消費者が広告を見た後、すぐに商品を購入するわけではなく、時間が経ってから購入する場合があるため、広告と購入の関係性を正確に把握することが困難になります。

 

4. インフルエンサーの信頼性の問題:インフルエンサーの中には、事実に基づかない不正確な情報を発信している場合があるため注意が必要です。例えばカメラのチャンネルを運営しているYouTuberの多くは、カメラマンでも写真家でもなく、ガジェットとしてカメラが好きなだけという場合も少なくありません。インフルエンサーの選定には十分な工数をかけることをお勧めします。

 

 

これらのデメリットを把握し、適切な対策を取りながらインフルエンサーマーケティングを実施することが重要です。



5. まとめ


夕日の中でガラスの地球儀を持つ手

5.1 インフルエンサーマーケティングの将来

インフルエンサーマーケティングは、現在のデジタルマーケティングにおいて重要な役割を果たしており、今後もその影響力は増していくと予想されます。

 

世界中でSNSの利用が拡大しており、SNS上での情報共有が主流となっています。その中で、インフルエンサーはSNS上でフォロワーを抱え、彼らに影響力を持っています。特に、若年層を中心に、インフルエンサーからの情報収集や商品購入を行う傾向が高まっています。このような背景から、企業はインフルエンサーマーケティングを利用して、より効果的なマーケティング戦略を展開することが求められています。

 

また、AI技術の発展により、より効果的なインフルエンサー選定が可能になってきています。AIを活用することで、インフルエンサーのフォロワーや投稿内容の分析ができ、マーケティング戦略の最適化につながります。今後もこのインフルエンサーマーケティングが、企業のマーケティング活動において、重要な役割を果たすことは間違いありません。

 

 

インフルエンサーマーケティング・・・名称が長い (TT)