顧客の本当の課題を探り出せ!

虫眼鏡を持つ女性

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際的企業において、アナリティクスサービスのビジネス開発を担当。海外で実績を積んだ最先端のアナリティクス手法を、日本の主要企業に導入。ハイテク、金融、医薬、通信、家電、流通、小売、飲料、食品、通販業界など、幅広い分野の企業に対する支援を行う。アナリティクスの適用範囲は、マーケティング分析、リスク管理、品質管理、需要予測、在庫最適化など多岐にわたる。データ分析とブランド構築の戦略を融合させる新しいアプローチを提供するため、株式会社アルファブランディングを創業。価格競争に陥らない強固なブランド構築をサポートしている。

宮崎祥一のプロフィール写真


今日の論点


購入する理由を正しく知る

 

顧客の購買行動を予測するために、多種多様なデータが分析されています。その結果、プロダクトに対する嗜好性や、セグメントの類似性など、さまざまなことが把握できるようになりました。

 

しかしデータ分析だけでは、顧客がなぜその商品を購入したのか説明することが出来ません。相関関係は把握できるのですが、因果関係を把握することが出来ないのです。

 

今回は顧客の課題を深堀りして、「なぜ購入したのか?」について探っていきたいと思います。



目次


1. 見えていない課題を探せ!


宝箱と金塊のオブジェ

1.1 表層課題と埋没課題

「価格」と「価値」について確認しておきましょう。販売側が設定した金額のことを「価格」と呼び、顧客側が感じた有用性のことを「価値」と呼びます。

 

商品やサービスをある「価格」で購入したときに、購入前に想像していたより大きな「価値」があったと感じると、顧客満足度が高まります。「価値」が「価格」を上回れば上回るほど、大きな満足度が得られるのです。

 

この満足度を高めるために必要なことは、顧客が抱えている「本当の課題」を解決することです。直接見えている課題ではなく、その課題を引き起こしている根源的な原因を解決するのです。見えている課題を「表層課題」、根源的な課題を「埋没課題」と呼びます。具体的には次のような例が挙げられます。

 

【美容室】

表層課題:髪を切りたい

埋没課題:モテるようになりたい

 

【英会話】

表層課題:英語でコミュニケーションを取りたい

埋没課題:会社で出世したい

 

【テニス教室】

表層課題:健康になりたい

埋没課題:友だちを増やしたい

 

この埋没課題を見つけ出すためには、顧客とコミュニケーションが大切です。いくら頭の中で仮設を立てたとしても、実際のところは聞いてみなければ解らないのです。

 

「顧客とのコミュニケーションが重要」という話はよく聞きますが、雑談をして終わってしまうことが少なくありません。顧客が抱えている埋没課題はなにか、それを明確にするためにコミュニケーションを図ることが大切です。



2. 課題を深堀りする理由


アイデアが出たことを表すイメージ図

2.1 顧客満足度が高まる

顧客の満足度を高めるためには、「価格」を大きく上回る「価値」を提供しなくてはなりません。埋没課題を解決することは、「私のことをよく分かってくれている」という特別感を提供することでもあり、顧客には大きな価値として認識されます。

 

これらの価値を、競合他社は簡単にマネをすることはできません。なぜなら、表向きには同じ商品やサービスを提供しているのですが、顧客からすると「全く別の商品やサービス」であると認識されているからです。

 

このことこそが、顧客の満足度を高めるための、最大の要因となっているのです。

 


2.2 提案の幅が広がる

埋没課題に対する理解が深まれば、顧客に対する提案の幅を広げることが出来ます。先ほどの美容室の例であれば、「髪を切りたい」であればヘアカットしか提供できませんが、「モテるようになりたい」であれば、ファッションやトレンドに関する情報を提供したり、またそれらに関連する商品を追加で販売することも可能です。

 

美容室が追加でヘアワックスを売ろうとしても、同じ様な商品はそこらじゅうで売られているので、「わざわざ購入する」というモチベーションは発揮されません。

 

しかし、「モテるようになりたい」という埋没課題を解決するために、自宅でヘアセットを行う際のテクニックを教えたとします。そのあとに「このワックスは伸びが良いからオススメ」と言えば、購入してもらうことができる可能性を、大きく高めることが出来ます。


2.3 競合他社への乗り換えを防ぐ

埋没課題に対する解決策を提案するということは、別の言い方をすると、特別感という価値を提供するということなので、競合他社と比較して顧客からの満足度が上がります。

 

情緒的な価値を、顧客と企業とで共有することによって連帯感が生まれますので、競合他社への乗り換えを防ぐことに繋がります。

 

競合他社へ乗り換えるモチベーションが下がれば、ライフタイムバリュー(生涯価値)の最大化にも繋がるのです。



3. まとめ


山に向かって両手を上げる登山家

3.1 答えは顧客が持っている

顧客満足度を高めるには、顧客とのコミュニケーションが大切です。ただ雑談をするのではなく、埋没課題を見つけ出すためにヒアリングをするという姿勢が必要です。

 

顧客は自分自身の課題や悩みを、積極的に話をしてくれませんが、聞けば答えてくれます。特にそれがその人にとって重大であればあるほど、能弁に話してくれます。

 

答えは顧客が持っています。埋没課題を探り出すのだという目的意識を持って、コミュニケーションを図ってみてください。