競合他社への乗り換えを防止する方法

上を見上げる女性

宮崎 祥一 / Shoichi Miyazaki

SAS Institute、Avanade、Teradataなどの外資系アナリティクス企業でビジネス開発に携わる。海外で実践されているアナリティクス実用化プロジェクト(購買行動分析、顧客接点分析、需要予測、在庫最適化)を、国内大手企業(流通、小売、飲料、食品、家電、通販)に導入。2011年に株式会社アルファブランディングを設立し、ブランド育成事業を開始。現在に至る。



今日の論点


顧客が離反するタイミングを見つけ出す

今回は「クチコミ客を増やす6つのステップ」のステップ5「顧客接点」を解説いたします。

 

どの企業も、新規顧客の獲得については力を入れるのですが、既存顧客が競合他社へ乗り換えることについては、あまり対策をしていません。

 

新規顧客の獲得するコストと、既存顧客の離反を防止するコストとを比較すると、どう考えても離反防止の方が安くつきます。

 

既存顧客が離反するタイミングというものがありますので、今回はそれを管理する方法を見ていきましょう。



目次


1. 顧客接点管理で離反を抑えろ


笑顔でガッツポーズをする女性

1.1 ひとつの失敗が離反を招く

顧客接点管理とは、企業が顧客と接するポイントを管理することで、顧客満足度を高め、競合他社への乗り換えを防ぎます。営業マンや販売員の接客はもちろんのこと、コールセンターでの会話やWebサイトのユーザビリティなども管理することで、顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)の最大化を図ります。

 

数ある顧客接点のなかで、たった一箇所でも合格点に達することが出来なければ、顧客は簡単に競合他社へ乗り換えます。既存顧客への販売コストが「1」だとすると、新規顧客への販売コストは「5」だと言われていますので、既存顧客の離反防止がいかに業績に直結するのかが解ります。


1.2 顧客接点管理の5つのステップ

この顧客接点管理を行うには、5つのステップがあります。それぞれの顧客接点に点数を付けるのですが、これは全てを総花的に改善するよりも、改善の効果が大きいと予想できる所に、リソースを注力させるためです。この点数により取捨選択を行います。

 

1.顧客接点を洗い出す

はじめのステップとして、全ての顧客接点を洗い出す必要があります。顧客が商品やサービスを目にするポイントを、全て書き出してください。顧客訪問、カタログ、Webサイト、コールセンターなどです。ただしプロモーションとして行っている一時的なイベントなどは、除外しても構いません。

 

2.重要度に点数をつける

全ての顧客接点を洗い出したら、それに対する重要度を数値化してください。5段階評価で良いと思います。対面での体験は購買行動に大きな影響を及ぼしますので、営業マンの訪問とカタログを読む行為とでは、当然ながら重要度が異なります。

 

3.品質に点数をつける

今度は顧客接点に品質の観点から点数をつけてください。一旦は経営者の主観で点数を付けていただいて結構です。顧客接点管理は継続して実施するものですので、アンケート調査の結果などの客観的な数値に、少しずつ置き換えていけば良いでしょう。

 

4.重要度が最も高い顧客接点を改善

顧客満足度を高めるためには、最も重要度が高い顧客接点の品質を改善することが近道です。満点にならなかった理由を洗い出し、改善策を検討します。具体的には、この顧客接点を担当している人たちに対して、個別のヒアリングを行って、さらに良くする方法を探り出します。大勢が参加する会議形式で実施すると、正しく現状を把握できませんので注意が必要です。

 

5.品質が最も低い顧客接点を改善

顧客の離反を防ぐには、この部分が最重要ポイントです。品質が最も低い顧客接点が離反するケースが多く、早急な改善が必要です。こちらも担当者に個別のヒアリングを行い、改善策を検討します。多くの場合、品質が低いのは個人個人の対応に問題があるのではなく、業務を支援する仕組みがないことに問題があります。人数を増やしたり、IT化を進めることで多くの場合は対処することが出来ます。



2. 顧客接点を管理する理由とは?


お店で接客をする従業員と客

2.1 競合他社への乗り換えが減る

顧客が競合他社へ乗り換える原因は、企業側から見ると些細なことのように思えます。しかし顧客側はこのことを重要視しているのです。この企業と顧客の意識レベルの相違こそが、解決するべき問題なのです。

 

 

顧客接点管理を実施することで、顧客からの目線で商品やサービスの提供方法を見ることができるようになるので、競合他社への乗り換えを減らすことが出来ます。


2.2 新たな接点で顧客満足度を高める

顧客接点を利用して、顧客満足度を高めることも可能です。最近のアイドルグループは、握手会を実施していますが、これは新たに顧客接点を設けて、そこでの満足度を高めようという試みだと言えます。好きなアイドルと握手することができるという体験は、そのファンからすると、とても高い満足度が得られますので、さらにコアなファンになってもらえることが期待できます。

 

企業に当てはめるなら、商品やサービスを通じて、企業と顧客とがつながるコミュニティーを作る方法があります。キャンプ用品の製造販売をしているスノーピーク社は、顧客を集めて実際にキャンプをするイベントを行っていますし、既存ユーザーを集めて商品企画会議を行っている自動車メーカーもあります。このような活動のことを「アンバサダー・プログラム」と呼ぶこともあります。


2.3 ブランドイメージを確立する

インターネットやスマートフォンなど、テクノロジーが進歩するに従って、顧客接点は増える傾向にあるのですが、発信するメッセージに一貫性がない企業が多く見られます。顧客からすると、接するたびにイメージが変わると行ったことも少なくありません。

 

これはブランドが多数あることに加えて、ブランド・マネージャーがある一定期間でローテーション(異動)することにも原因があります。新しい担当者は、なにか自分のオリジナリティーを付け加えたいと考えるため、コンセプトにズレが発生することが見られます。顧客接点管理で横串を刺すことが、このズレを防止し、ブランドイメージを確立することに寄与します。



3. まとめ


海を眺める女性

3.1 常に顧客から見られていることを忘れない

顧客はあらゆる方向から企業の活動を見ています。その活動のうち、たったひとつでも気に入らないことがあれば、簡単に競合他社へ乗り換えます。

 

それを防止するためには、重要度の高い顧客接点の品質を高めることと、品質が低い顧客接点を仕組みとして改善することを、同時並行的に行う必要があります。

 

新規顧客を開拓するよりも、既存顧客を手厚くフォローする方が、最終的には企業の利益につながるのです。