CSV活動を支援するマーケティング戦略

コップで水を飲む女の子

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際企業でアナリティクスのビジネス開発に携わった経験を活かし、オーセンティックマーケティングを通じて、価格競争に陥らない強いブランド作りを支援しています。オーセンティックマーケティングは、企業が本質的な価値を顧客に伝え、持続可能な成長を目指すための戦略です。このブログでは、そうした戦略や実践例を詳しく解説しています。

宮崎祥一のプロフィール写真


今日の論点


CSV活動で顧客との絆を深める

みなさんCSV活動ってご存じですか?・・・CSR?・・・惜しい!

 

CSV(Creating Shared Value)は、企業が社会的な課題を解決することをビジネスチャンスととらえて行う活動のことです。一方CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が社会的な責任を果たすための活動のことです。

 

まぁ、簡単に言うと、ビジネスとして考えるかどうかの違いですね。

 

今回はこのCSV活動(ビジネスとして考える方)を効果的に行うための、オーセンティックマーケティング(Authentic Marketing)の活用について解説していきたいと思います。

 

またまた出てきた・・・オーセンなんとか (^^)



目次


1. CSVとは何か?


緑色のクレヨンを持つ手と紙に書かれた新芽

1.1 CSVとは何を指すのか?


CSV(Creating Shared Value)とは、企業が社会的な課題を解決することにより、経済的な利益を追求するという経営手法です。社会貢献と企業利益を同時に達成することを目的とし、これによって、顧客からの信頼を獲得すると同時に、ブランド力も向上させます。

 

CSV活動において、経営者は自社のビジョンや信念を明確にし、社会的な課題と経済的な利益を結びつける戦略を立案します。また、それらの活動に関して社内外に情報を発信し、さまざまな立場の人たちを巻き込みながら、社会的な課題の解決を試みます。

 

近年、企業の社会的責任と持続可能な成長への取り組みが注目を集めており、多くの企業がCSV活動を取り入れています。ただし、なにを社会的な課題として取り上げるかは企業によって異なるため、その活動自体も企業ごとにかなり違ったものになっています。


1.2 CSV活動で得られる4つの効果


CSV活動を取り入れることで、企業は様々な効果を期待することができます。以下に、その主な効果を4つにまとめました。

 

1. 企業価値の向上:CSV活動を通じて、企業は社会的な課題の解決に取り組みます。これにより、企業の社会的責任が評価され、企業価値が向上します。

 

2. 顧客からの信頼を獲得:顧客は社会的な課題に取り組む企業に対して、好感を持ちやすくなります。企業がCSV活動によって社会に対する貢献を示すことで、顧客からの信頼を得ることができます。

 

3. 競合他社との差別化:CSV活動は競合他社との差別化要因にもなります。商品やサービスの機能面での差別化が難しい場合でも、CSV活動を通じた企業のビジョンや信念を顧客に伝えることで、競合他社との差別化を図ることができます。

 

4. 社員のモチベーション向上:社員は社会的な課題に取り組む企業の一員であることを、誇りに思うようになります。これによりモチベーションの向上が期待できます。また、社員自身がCSV活動に参加することで、会社との一体感が生まれ、働く意欲が高まります。

 

これらの効果を踏まえると、CSV活動は企業にとって有益な取り組みであることがわかります。企業はCSV活動を戦略的に取り入れることで、競争力を向上させることができるのです。


1.3 CSV活動の具体的な事例


それではCSV活動の具体的な例を、いくつか見ていきましょう。

 

1. ユニリーバ:ユニリーバはサステナビリティを経営の軸に据えており、環境に配慮した製品の開発や、地域社会への貢献を行っています。例えば、「ダブ」のシャンプーやボディソープは、リサイクル可能なプラスチックを使用しており、プラスチックがゴミにならない未来を作ろうとしています。

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2. IKEA:スウェーデンの家具メーカーであるイケアは、持続可能な製品開発や環境保護に力を入れています。イケアは2030年までに、イケア製品に使用するプラスチックを、リサイクルプラスチックまたは再生可能ベースのプラスチックのみにすると宣言しています。また、環境に配慮した物流や、顧客にリサイクルを促すプログラムも、合わせて展開しています。

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3. トヨタ自動車:トヨタ自動車は環境保護に積極的に取り組んでおり、環境技術を活用した自動車の開発に力を入れています。水素燃料電池車「ミライ」の開発や、電気自動車の普及を通じて、地球環境と地域社会の持続可能性に貢献しています。

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 さて、このように各企業が取り組んでいるCSV活動ですが、これによって多くのメリットを得ると同時に、注意しておくべきデメリットもあります。次の章ではこれらのメリットとデメリットについて、詳しく見ていきましょう。



2. メリットとデメリット


メリットとデメリット

2.1 CSV活動のメリット


それでは企業がCSV活動を行うメリットを、いくつか見ていきましょう。

 

1. 持続可能なビジネス成長:CSV活動は社会的な課題の解決に自社のビジネスを結び付けることで、新たなビジネスチャンスを作り出します。社会的ニーズに合致した商品やサービスを提供することにより、市場での競争力を高め、持続可能なビジネス成長を促進します。

 

2. ステークホルダーの共感と信頼:CSV活動は企業の社会的な貢献を明確化し、ステークホルダーとの共感と信頼関係を築きます。顧客は社会的な課題への取り組みに共感し、企業の商品やサービスに対する信頼度を高めることができます。

 

3. リスク軽減と法の遵守:CSV活動は社会的なリスクを軽減し、法律や規制に関する要件を遵守する役割を果たします。企業が社会的な責任を果たすことで、ブランドの信頼性を担保し、リスクの軽減を図ることができます。

 

4. 社会的なインパクト:CSV活動は社会的な課題の解決によって、各方面にインパクトを与えることができます。社会的なニーズに応える商品やサービスの提供や、雇用の創出、また地域経済の活性化など、地域社会や環境への良いの影響を与えることができます。

 

これらのメリットにより、企業は持続可能なビジネスの成長を実現する事ができます。また、ステークホルダーとの共感と信頼関係を築きながら、社会的な影響力を高めることが可能となります。


2.2 CSV活動のデメリット(注意すべき点)


次にCSV活動のデメリットや注意すべき点を見ていきましょう。

 

1. ビジネスと社会貢献のバランス:CSV活動はビジネスの成功と、社会的な課題の解決を両立させることを目指しますが、バランスの取り方が難しい場合があります。過度な社会的貢献による収益の減少や、ビジネスにおける収益とのバランスに注意が必要です。

 

2. 成果に対する評価方法:社会的な価値は多種多様であるため、企業やステークホルダーによって、その解釈が異なる場合があります。CSV活動の成果を、定量的に評価するための指標や、その方法論の確立が必要です。

 

3. リソースと専門知識の追加:CSV活動にはリソースや専門知識の追加が必要になります。社会的な課題の解決に取り組むためには、リソースを確保するための経済的な投資や、問題を解決するための専門的なノウハウが必要となります。企業はリソースの適切な配分と、投資の分配計画を行う必要があります。

 

4. 長期的な視点の確保:CSV活動は社会的な課題の解決に取り組むために、長期的な視点の確保が必要となります。活動の成果やその影響を把握するのに時間がかかる場合があり、企業として持続的なコミットメントを求められることになります。

 

プロジェクトを進めていく中で、進捗状況をよく観ていないと、これらの問題につまづくことになります。これらのデメリットや注意すべき点を認識しながらCSV活動を計画し、戦略的に実施することで、ビジネスの成長と社会的な貢献とをバランスさせることが重要です。



3. オーセンティックマーケティングでCSV活動を活性化


アイデアを示す電球を両手でもつ白い服の人

3.1 オーセンティフィックマーケティングとは


CSV活動に関する具体的なアクションプランを考える際に、オーセンティックマーケティングが役に立ちます。オーセンティックマーケティングとは、企業が自社の商品やサービスを、信頼のおける(オーセンティック/Authentic)メッセージを伝え、顧客との信頼関係を築くことを目的としたマーケティング手法です。オーセンティックマーケティングは、企業と顧客との間で共感と信頼関係を築き、持続可能なビジネスを築くことを重要視します。

 

CSV活動に対してオーセンティックマーケティングを活用すれば、企業が自社のビジネスを通じて、社会的な課題の解決に取り組みながら、ブランドの誠実性と信頼性を高めることができます。

 

また、企業の持続可能なビジネスの成長と、社会的な課題を解決するという、2つの方向性を追求することで、新たな相乗効果を生みだすことが可能です。顧客が商品やサービスに共感し、社会的な価値を享受することで、より良い未来の実現に向けた目標を達成することが可能となるのです。


3.2 具体的なステップ


CSV活動を実践するためには、以下のプロセスを踏むことが重要です。ステップごとに細かく見ていきましょう。

 

1. 経営者のビジョンや信念を明確にする:最初に、経営者自身が自社のビジョンや信念を、明確することが大切です。これにより、どの社会的は課題に取り組むべきか、またどのような価値観を顧客と共有したいのか、CSV活動の基本的な方向性を定めることが可能となります。経営者が率先してビジョンや信念を共有し、社員に理解してもらうことが大切です。

 

2. 社会的課題と経済的利益を両立させる:次に、自社のビジョンや信念に基づいて、社会的課題と経済的利益を結びつけ、それを両立させる戦略を立てることが必要です。これには市場や競合の分析を行い、どのような社会的な課題に取り組むべきなのか、十分検討する必要があります。また取り組む社会的な課題を決定したのち、具体的なCSV活動をプランを立案し、それを実行していくことが大切です。

 

3. CSV活動を社内外に発信する:CSV活動を実行していく中で、その活動を社内外に積極的に発信することも重要です。社内では社員に対して進捗状況を報告する機会を設け、また一方では、顧客や取引先、また投資家などのステークホルダーに対して、これらの活動をアピールする必要があります。

 

4. CSV活動に社員を巻き込む:社員が自らの経験や知識をCSV活動に活用できるように、その環境を整えることも大切です。例えば、社員が新しいアイデアを提案するための議論の場を設けたり、CSV活動に関するワークショップを開催することなども有効な手段です。

 

5. 成果を定期的に評価する:最後に、CSV活動の成果を定期的に評価して、改善策を検討する必要があります。これには売上や利益といった定量的な成果だけでなく、顧客満足度といったような定性的な成果も、評価の対象とするべきです。これらの評価結果に基づいて、CSV活動の方向性を見直したり、新たな取り組みに着手することで、CSV活動の質を高めることができます。 

 

これらのプロセスを実践することで、企業はビジネスの継続的な成長と、社会的な課題の解決とを、同時に満足させることが可能になります。そして結果として、顧客や社員からの信頼性を高め、企業としての競争力を向上させることができます。



4. まとめ


パソコン画面に表示された緑の地球

4.1 CSV活動とマーケティングの将来について


オーセンティックマーケティングを活用し、CSV活動で企業や経営者のビジョンや信念を顧客に伝えることで、その価値観に共感する人をファンにすることができます。

 

競合他社が商品の機能を模倣しても、ビジョンや信念は独自のものであり、差別化を図ることができます。CSV活動は企業のブランド力を高め、持続可能な成長を支える一助となります。

 

CSV活動は今後もますます重要性を高めていくと予想され、企業価値を高めるためにも、継続して実施するべき重要事項です。企業は社会的な責任を果たし、持続可能な未来への貢献を目指すことができるのです。

 

 

・・・最近は「安い」「品質が良い」は評価されず、「価値観が合う」ことが評価されますので、CSV活動は結構大事ですよ。