オムニチャネルで顧客との信頼関係を築け!

飲み物を持ってオフィス街を歩く女性

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際的企業において、アナリティクスサービスのビジネス開発を担当。海外で実績を積んだ最先端のアナリティクス手法を、日本の主要企業に導入。ハイテク、金融、医薬、通信、家電、流通、小売、飲料、食品、通販業界など、幅広い分野の企業に対する支援を行う。アナリティクスの適用範囲は、マーケティング分析、リスク管理、品質管理、需要予測、在庫最適化など多岐にわたる。データ分析とブランド構築の戦略を融合させる新しいアプローチを提供するため、株式会社アルファブランディングを創業。価格競争に陥らない強固なブランド構築をサポートしている。

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今日の論点


オンラインとオフラインの統合

オムニチャネル?・・・結構よく見るけど、あまりよく知らない、そういう方が多いと思います。

 

ちなみに「オムニチャネル」の語源は、ラテン語の「omni(全て)」と英語の「channel(チャネル)」から作られており、顧客が複数のチャネルを通じて、一貫した体験を得ることを指すマーケティング用語です。

 

まぁ、ネットで買っても実店舗で買っても、一貫した体験が得られるということです・・・まだ解りづらいですね。取り合えず解説に入りたいと思います (^^)/



目次


1. オムニチャネルとは?


CGで作成したデジタルデバイスとそれを持つ手

1.1 オムニチャネルとは何か?

オムニチャネル(Omnichannel)とは、顧客が複数のチャネル(オンライン、モバイル、店舗など)を通じて、商品やサービスを購入する際に、一貫した体験を提供するマーケティング戦略やアプローチのことを指します。

 

従来のマルチチャネル(Multichannel)戦略では、企業が複数のチャネルを提供していましたが、それぞれのチャネルが独立して運営され、一貫性のある体験が得られない場合がありました。一方、オムニチャネル戦略では、異なるチャネルをシームレスに統合し、顧客が自由にチャネルを切り替えながらも、一貫性のある体験を提供することを目指しています。

 

オムニチャネルの目的は、顧客にとって便利で統一感のある体験を提供するだけでなく、顧客のニーズや行動を理解し、個別のチャネルでは得られないデータを収集することにあります。これにより、顧客の嗜好や購買行動のパターンを把握し、よりターゲティングされたマーケティング施策を実施することが可能となります。

 

例えば、オムニチャネルの一例としては、顧客がオンラインで商品を調べ、モバイルアプリで注文し、最寄りの店舗で受け取るというプロセスが挙げられます。また、店舗での購買履歴やオンラインの閲覧履歴を統合して、それぞれの顧客に対してパーソナライズされた情報や特典を提供することもオムニチャネルの重要な機能となります。

 

オムニチャネルの重要性は、デジタル技術の進歩とともに、ますます高まっています。顧客はさまざまなチャネルを自由に使い分け、企業に対して一貫性のある体験を求めています。したがって、企業がオムニチャネル戦略を採用し、顧客の期待に応えることが求められています。

 


1.2 なぜ注目を集めているのか?

いまオムニチャネルが注目を集めている背景には、いくつかの要因が挙げられます。一緒に見ていきましょう。

 

1. 購買行動の変化:デジタル技術の発展やスマートフォンの普及により、顧客の購買行動や情報収集の方法が多様化しています。顧客はオンラインとオフラインの境界を問わず、様々なチャネルを利用して商品やサービスの情報にアクセスしています。企業はこの変化に対応し、顧客が求める一貫性のある体験を提供する必要があります。

 

2. 競争の激化:eコマースの急速な成長や新たなプレーヤーの登場により、競争環境が激化しています。企業は差別化を図るために、商品やサービスの機能や品質に関する情報だけではなく、ビジョンや価値観といったものも伝える必要に迫られています。オムニチャネル戦略を採用し、顧客に対して一貫した独自の価値提案を行う必要があります。

 

3. データ活用の重要性:顧客データの収集や分析が、マーケティング戦略においてますます重要になっています。オムニチャネル戦略を通じて、企業は様々なチャネルからの顧客データを一元的に管理することができるようになりました。これにより、効果的で効率的なマーケティング施策を実施できます。

 

4. テクノロジーの進化:AI、IoT、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーの進化が、オムニチャネル戦略の実現を下支えしています。これらの技術を活用することで、顧客に対してパーソナライズされたサービスや、一貫性のあるシームレスな体験を提供することが可能となってきました。

 

これらの理由から、オムニチャネル戦略は企業にとって重要なマーケティング手法となっており、多くの注目を集めています。顧客との長期的な信頼関係を築くために、企業はオムニチャネル戦略を積極的に取り入れています。



2. オムニチャネルの基本戦略


Stragegyと書かれたパズルのピース

2.1 実践するための具体的なステップ

オムニチャネル戦略を企業が実践する際に、取り組むべき具体的なステップを見ていきましょう。

 

1. 顧客理解の深化:顧客セグメントやペルソナを作成し、顧客の購買行動のパターンや情報収集方法、価値観などを綿密に分析します。アンケートやインタビュー、データ解析などを活用し、顧客の実態を把握しましょう。

 

2. 顧客接点の特定:顧客接点(タッチポイント)とカスタマージャーニー(Customer Journey)を把握することで、顧客と企業との関わり方を明らかにします。それぞれの顧客接点において、適切な情報やコンテンツがタイムリーに提供されているのかを検討します。

  

3. 組織体制の整備:オムニチャネル戦略を推進するための専門チームを設立し、各部門との連携を強化します。また、経営層やステークホルダーにもオムニチャネル戦略の重要性を説明し、全社的な取り組みとして位置づけることが大切です。

 

4. テクノロジーの導入:CRM(顧客関係管理)システムやマーケティングオートメーションツールなど、オムニチャネル戦略に必要なテクノロジーを導入します。これにより、顧客データの一元管理を実現し、リアルタイムに情報共有やアクションが可能になります。

 

5. データ活用:顧客の属性データや閲覧データ、また購買データやサポート履歴などを活用して、顧客に合わせたパーソナライズされたコミュニケーションやサービスを提供します。また、データをもとに施策の効果を測定し、改善点を見つけ出すことが重要です。

 

6. 評価・改善のPDCAサイクル:オムニチャネル戦略を実施した成果をKPI(重要業績評価指標)などを用いて定期的に評価し、改善点を見つけ出します。これらのプロセスは継続して実施されなければなりません。

 

これらのステップを詳細に踏むことで、企業はオムニチャネル戦略を効果的に実践し、顧客満足度の向上やブランド力の強化に繋げることが可能となります。


2.2 オムニチャネルを実践する際の注意点

オムニチャネル戦略を成功させるためには、以下のポイントに注意して取り組むことが重要です。

 

1. 顧客目線での取り組み:企業の都合や制約に捉われず、常に顧客目線での取り組みを心がける必要があります。顧客がどのような体験を求めているのかを常に考慮し、それを実現するための施策を実行していくことが大切です。

 

2. 社内コミュニケーションの強化:オムニチャネル戦略は、一つの部門が単独で実施するには難しく、社内の様々な部門が連携して取り組む必要があります。情報共有や意思疎通を円滑に行い、全社一丸となってオムニチャネル戦略を推進していくことが求められます。

 

3. 継続的な改善:オムニチャネル戦略は、一度作成したプランに固執せず、顧客ニーズの変化や市場状況に応じて柔軟に対応し、継続的に改善を行うことが重要です。PDCAサイクルを回し、戦略の最適化を図っていきましょう。

 

これらのポイントに注意しながら、オムニチャネル戦略を実践すれば、長期的な経営の安定化に寄与することができます。オムニチャネル戦略は顧客との信頼関係を築く上で重要な手法であるため、全社一丸となって積極的に取り組むべきです。



3. オムニチャネルの活用事例


ウィンドウショッピングをするオレンジ色の服を着た女性

3.1 具体的な活用事例

オムニチャネル戦略の活用事例をいくつか見ていきましょう。

 

ファッション業界:Zara

Zara(ザラ)は、オンラインとオフラインの在庫情報を統合し、顧客がどのチャネルでも最新の在庫状況を確認できるようにしています。また、オンラインで注文した商品を店舗で受け取ることができる「クリック・アンド・コレクト」サービスを提供しており、顧客に便利なショッピング体験を提供しています。

 

ファッション業界:H&M

H&M(エイチアンドエム)は、オンラインとオフラインの顧客データを統合し、パーソナライズされたコミュニケーションやプロモーションを提供しています。また、オンラインで購入した商品を店舗で返品・交換できるサービスを提供し、顧客の利便性を高めています

 

小売業界:Walmart

Walmart(ウォルマート)は、オンラインでの注文を店舗で受け取る「Site to Store(サイト・トゥ・ストア)」サービスを展開しています。さらに、オンライン上で顧客が商品を検索しやすくするため、店舗と同じような商品カテゴリー構造をオンラインでも採用しています。また、モバイルアプリを活用し、顧客が店内で商品をスキャンして価格をチェックできるようにしています。

 

小売業界:Target

Target(ターゲット)は、店舗とオンラインの価格を一致させることで、顧客に一貫した価格体験を提供しています。また、モバイルアプリを活用し、顧客に店内の商品の位置情報を提供したり、デジタルクーポンを利用できるようにしています。さらに、Targetは「Drive Up(ドライブアップ)」サービスを展開しており、オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で受け取ることができます。これにより、顧客は商品を受け取る際に店舗に入ることなく、時間と手間を節約できます。

 

家電業界:Best Buy

Best Buy(ベスト・バイ)は、オンラインでの情報提供を充実させ、顧客が商品を検討しやすいようにしています。また、オンラインで購入した商品を店舗で受け取ることができる「Store Pickup(ストア・ピックアップ)」サービスを提供し、顧客に快適なショッピング体験を提供しています。

 

これらの成功事例からわかるように、オムニチャネル戦略を効果的に実践することで、企業は顧客に快適で一貫したショッピング体験を提供し、ブランド力を強化することができます。オンラインとオフラインのチャネルをシームレスに組み合わせることで、顧客満足度の向上に繋がり、経営の安定化にも寄与します。



4. オムニチャネルのメリットとデメリット


メリットとデメリット

4.1 メリット

オムニチャネル戦略を実践することによって、どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

 

1. 顧客満足度の向上:オムニチャネル戦略により、顧客はオンラインとオフラインのあらゆるチャネルで一貫したショッピング体験をすることができます。これにより顧客満足度が向上し、リピート購入やクチコミによる新規顧客獲得が期待できます。

 

2. 顧客ロイヤリティの向上:オムニチャネル戦略を通じて、企業は顧客との信頼関係を築くことができます。パーソナライズされたコミュニケーションやプロモーションを提供することで顧客ロイヤルティ(Loyalty)が向上し、長期的な取引関係が築かれます。

 

3. より効果的なマーケティング活動:オムニチャネル戦略を実践することで、企業はオンラインとオフラインの顧客データを統合し、高い精度のターゲティングやセグメンテーションが可能となります。これによりマーケティング活動の効率が向上し、コスト削減にも繋がります。

 

4. 在庫管理の最適化:オムニチャネル戦略を採用することで、企業は在庫情報をリアルタイムで共有し、最適化することができます。仮にオンラインで在庫切れであったとしても、実店舗に在庫があれば、これを引き当てることができます。これにより在庫切れや過剰在庫を抑制し、販売機会の損失やコストの増加を防ぐことができます。

 

5. ブランドイメージの強化:オムニチャネル戦略を通じて、企業は一貫したブランドイメージを顧客に提供できます。これにより、顧客は企業の信頼性を感じることができ、ブランド力が強化されます。

 

これらのメリットを活かし、企業はオムニチャネル戦略を効果的に実践することで、顧客との長期的な信頼関係を築くことができます。


4.2 デメリット

オムニチャネル戦略を実践する際のデメリットについても、詳しく見ていきましょう。

 

1. 高い初期投資:オムニチャネル戦略を実践するためには、オンラインとオフラインのチャネルをシームレスに連携させる必要があります。情報システムのインフラを整備するには、システムの導入やカスタマイズ、またデータの移行や統合など、高い初期投資が必要となります。

 

2. 複雑な運用管理:オムニチャネル戦略では、オンラインとオフラインのチャネルが連携しているため、運用管理が複雑になる恐れがあります。例えば、在庫管理や顧客データの一元化、チャネル間での価格設定やプロモーションの調整など、運用管理に工数と費用がかかります。

 

3. スタッフの研修・教育コスト:オムニチャネル戦略を成功させるためには、スタッフがオンラインとオフラインのチャネルを適切に活用できるようになる必要があります。そのため、スタッフの研修や教育かける費用が必要です。

 

4. セキュリティ・プライバシーの課題:オムニチャネル戦略では、顧客データを一元化して様々なチャネルで活用するため、セキュリティやプライバシーの課題が生じることがあります。企業は、顧客データの適切な保護やプライバシーポリシーの遵守に十分な注意を払う必要があります。

 

これらのデメリットを踏まえつつ、企業はオムニチャネル戦略の導入や実践に際して、コストや運用管理の負担と効果のバランスを見極めることが重要です。また、適切なセキュリティ対策やスタッフの研修を行うことで、デメリットを最小限に抑えることが可能です。



5. オムニチャネルの急所


解決策を見つけた女性

5.1 成功させるにはココを抑えろ!

オムニチャネル戦略を実践する際に最も重要なことは「顧客中心のアプローチ」です。顧客中心のアプローチとは、顧客のニーズや期待に対応し、顧客にとって最も快適で便利な購買体験を提供することを目指す戦略です。

 

オムニチャネル戦略の目的は、オンラインとオフラインのチャネルをシームレスに連携させることで、顧客がどのチャネルを利用しても一貫した購買体験を提供することです。そのため、顧客のニーズや期待を理解し、それに応じたサービスや商品を提供することが重要となります。以下は、顧客中心のアプローチを実践する上で重要なポイントです。

 

1. 顧客データの収集と分析:顧客の購買履歴や行動データを収集・分析し、顧客のニーズや期待値を把握することが重要です。これにより、それぞれの顧客に対して適切な商品やサービスを提供できるようになります。

 

2. シームレスな顧客体験の提供:オンラインとオフラインのチャネルをシームレスに連携させ、顧客がどのチャネルを利用しても一貫した購買体験を提供することが重要です。例えば、オンラインで商品を検索し、店舗で試着や購入ができるようにすることが考えられます。

 

3. パーソナライズされたコミュニケーション:顧客のニーズや期待値に応じた、パーソナライズされたコミュニケーションを行うことが重要です。これにより顧客の関心を引き、リピート購入やブランドロイヤリティを向上させることにつながります。

 

4. 顧客サポートの充実:顧客が購入やアフターサービスに関する問い合わせを容易に行えるよう、オンラインとオフラインのチャネルで顧客サポートを充実させることが重要です。

 

顧客中心のアプローチを実践することで、企業は顧客中心のアプローチを実践することで、企業は顧客満足度の向上、ブランドロイヤリティの強化、リピート購入の促進などの効果を期待できます。さらに、顧客の声やフィードバックを適切に取り入れ、サービスや商品の改善に努めることで、競合他社との差別化を図り、市場での地位を確固たるものにすることができます。



6. まとめ


まとめを指さす女性

6.1  オムニチャネルの今後の可能性

今後のオムニチャネル戦略は、新しいテクノロジーや取り組みがさらに発展することで、企業と顧客の関係性を一層強化し、企業の成長を支える重要な要素となるでしょう。オムニチャネル戦略の今後の可能性について見ていきましょう。

 

1. AIとの連携:今後のオムニチャネル戦略では、AIを活用することにより、よりパーソナライズされた顧客体験を提供することが期待されます。例えば、顧客の購買履歴や行動データを元に、AIが顧客に適切な商品やサービスを推薦することなどが考えられます。

 

2. 仮想現実や拡張現実の活用:仮想現実(VR: Virtual Reality)や拡張現実(AR: Augmented Reality)などの最新のテクノロジーを活用することで、オンラインとオフラインの境界がさらに曖昧になり、よりリアルなショッピング体験が提供されることが期待されます。例えば、オンライン上で商品を試着したり、家具などを自宅に配置する際のシミュレーションに活用することができます。

 

3. IoTの活用:IoT(Internet of Things)デバイスを活用したオムニチャネル戦略も、今後の可能性として注目されています。例えば、スマート家電やウェアラブルデバイスを通じて、顧客が商品やサービスを購入できるようにすることが考えられます。

 

今後のオムニチャネル戦略は、これらの技術や取り組みがさらに発展することで、企業と顧客の関係性を一層強化し、企業の成長を支える重要な要素となるでしょう。