【ARで販促】開発のポイントとは

スマートフォンを操作する女性とグラフやチャートのCG

宮崎 祥一 / ブランドプロデューサー

SAS Institute、Teradata、Honeywellなどの国際的企業において、アナリティクスサービスのビジネス開発を担当。海外で実績を積んだ最先端のアナリティクス手法を、日本の主要企業に導入。ハイテク、金融、医薬、通信、家電、流通、小売、飲料、食品、通販業界など、幅広い分野の企業に対する支援を行う。アナリティクスの適用範囲は、マーケティング分析、リスク管理、品質管理、需要予測、在庫最適化など多岐にわたる。データ分析とブランド構築の戦略を融合させる新しいアプローチを提供するため、株式会社アルファブランディングを創業。価格競争に陥らない強固なブランド構築をサポートしている。

宮崎祥一のプロフィール写真


今日の論点


ARを販促に活用する際のポイント

ARとは現実の空間にCGを合成して表示するテクノロジーのことで、「拡張現実」と呼ばれています。

 

今回は このARを販促に取り入れる際に、成功と失敗を分けるポイントをまとめました。ARの制作業者だからこそ知っている、企画・制作・開発のポイントです。販促でARを活用したい方にお薦めします。

 

えっ、ARって聞いたことがない? VR? おっ、おしい!

 



目次


1. ARとは何か?


ダイレクトメールにCGを重ね合わせて表示しています。

1.1 ARとは現実世界にCGを合成する技術

AR(Augmented Reality / 拡張現実)とは、現実の空間にCG(コンピュータ・グラフィック)を合成して表示するテクノロジーのことです。また、類似のテクノロジーに、VR(Virtual Reality / 仮想現実)というものがありますが、こちらの場合は、見えているもの全てがCGで構成されている点で異なります。「現実の空間」をベースとしているものがAR、「仮想の空間」をベースとしているものがVRです。

 

ARの目的は、さまざまな要求を持った人たちに対して、適切な情報をCGで表示することにあります。例えば同じタウンマップを見たとしても、電車に乗りたい人に対しては駅の改札口の場所を表示し、食事をしたい人に対しては近くのレストランを表示するといったように、それぞれに対して異なった情報を届けることができます。

  

情報を必要とする人に、適切なタイミングで、適切な情報で提供する。これがARの目的です。


1.2 急速に拡大するAR/VR市場

ARを最も簡単に体験することができるのは、スマートフォンのアプリを使うことです。このスマートフォンの普及に伴って、ARの市場は急速に拡大しています。具体的な数字を確認しておきましょう。

 

米国の調査会社であるIDC(※)によると、世界のAR/VRの市場は2019年の「168.5億ドル(1兆8千億円)」から、2023年は「1606.5憶ドル(17兆4千億円)」へ急速に拡大すると予測されています。

 

セクター 2023年

年平均成長率(CAGR)

2018年〜2023年

流通・サービス

456.6億ドル

92.5%

コンシューマー

400.0億ドル 52.2%

製造・資源

361.1億ドル 97.3%

パブリックセクター

243.1億ドル 96.7%

インフラ

94.1億ドル 122.8%

金融

51.6億ドル 133.9%

合計

1606.5億ドル 78.3%

※ 2023年までの世界AR/VR関連市場予測を発表IDC, 2019 ) 

 

これはAR単独の数値ではなくVRと合算された数値ですが、お互い隣接したテクノロジーですので、市場の成長率を見るには問題ないと思います。

 

マーケットが急速に拡大するということは、ARが持つ機能も急速に進化するということです。今後、さまざまな用途でARが利用されることは間違いありません。



2. ARの種類はいくつあるのか?


2.1 マーカー型AR

ARは現実の空間にCGを合成して表示するのですが、どこにそのCGを表示するのか、場所を指定する必要があります。この場所を指定する方法によって、「マーカー型AR」、「マーカーレス型AR」、「ロケーション型AR」の3つに分類できます。

 

まず始めに「マーカー型AR」ですが、これは事前にCGを表示する対象(マーカー)を決めておく方法です。写真やロゴ、3次元のオブジェクトなど特徴点を事前に登録しておき、これに対してCGを表示します。上でご紹介した動画は、この1000円札をマーカーとしたARです。

 

表示するCGは、マーカーに接触している必要はありません。マーカーから離れていても問題ありませんし、マーカーの内部でも表示させることもできます。スマートフォンを使ったARの場合、マーカーが画面から外れても、スマートフォンの角度センサーや速度センサーなどの情報から位置を算出すれば、そのまま元の位置にCGを表示させ続けることが可能です。

 

このマーカー型ARにはひとつ弱点があります。それはマーカーの図柄が単純である場合は、特徴点を検出することができず、マーカーとして利用できないということです。市松模様のような単調なパターンの繰り返しや、全体的にコントラストの弱いものは、マーカーとして使用することができません。

 

 ただ特徴点さえ検出できれば、常に正しい位置にCGを表示することができますので、利用者からするとストレスのない方法だといえます。

 

 


2.2 マーカーレス型AR

次に「マーカーレス型AR」ですが、事前にマーカーを登録するのではなく、表示される映像の特徴点をリアルタイムで検出して、CGを表示する方法です。CGを正確な位置に表示するために、水平面や垂直面を検知して、その面の上にCGを表示するのが一般的な方法です。

 

マーカー型ARとは異なり、事前のマーカー登録は不要です。画面に写った場所をタップしてやれば、そこにCGを表示することができます。

 

ただ、リアルタイムで特徴点を検出し、その特徴点に対してCGをマッピングしますので、高速な演算処理が求められます。そのために、スマートフォンを速く動かすと、CGがズレてしまったり、表示できなくなってしまったりと、利用者としてはストレスを感じることもあります。

 

 ただ、マーカー型ARとは異なり、マーカーを配布する必要がありませんので、利用者から見ると手間がかからない方法だといえます。


2.3 ロケーション型AR

マーカー型ARやマーカーレス型ARが、「モノ」に対してCGを表示するのに対して、「場所」に対してCGを表示するのがロケーション型ARです。

 

まず、CGを表示する場所を決めて、その位置情報を取得します。スマートフォンには、GPSから自分の位置情報を取得する機能が搭載されています。このCGの位置情報とスマートフォン本体の位置情報とが、ある程度近づけばCGが表示されるというプログラムを書いておく方法です。

 

例えばコンサート会場に近づけば、アーティストのCGを見ることができたり、スタンプラリーでは、お店のスタンプの代わりにCGを見せたりする使い方です。

 

このロケーション型ARは、マーカーを必要とせず、利便性がとても高いのですが、処理するべきデータ量が多いため、ハードウェアの性能が貧弱であると、上手く動作しないことがあります。

 

野外での利用や、大きなCGを表示するときなのに便利な方法ですので、イベントなどで利用されることが多くなっています。



3. ARは販促に効果があるのか?


3.1 強いインパクトで記憶に残す

 現実の空間にCGを重ねて表示させるのですから、過去にARを体験したことがない人たちに対しては、非常に強いインパクトを与えることができます。

 

強いインパクトを与えることができるということは、記憶に深く刻み込まれるということでもあり、商品やブランドを印象づけたい企業などが、積極的にARを販売促進に取り入れ始めています。

 

日本国内では、2017年にスマートフォンの普及率が6割を超える(※)など、ARを普段の生活で活用できるインフラが整いつつあることも、ARの利用に拍車がかかっている要因の一つです。

 

また、スマートフォンに変わる次世代のARデバイスとして、メガネやコンタクトレンズに注目が集まっています。通信の新機軸である5Gが普及すれば、リアルタイムで大量の情報を取得できるようなるため、ARは人間の判断や意思決定に対して、大きな変化をもたらすと期待されています。

 

※  平成30年度版 情報通信白書, (総務省 2018)


3.2 ARのインパクトを検証してみる

実際にARを使ってみれば、そのインパクトを実感できます。ただ販売促進などで利用する際には、具体的にどの程度の効果が見込めるのか、数値として確認しておきたいところです。この費用対効果を図るために、簡単な実証実験をしてみました。15秒のAR動画をFacebookに広告として掲載した結果がコチラです。

 

ARを使った動画広告の結果(表)|インプレッション(1,269)、動画の3秒再生数(1,121)、動画の10秒再生数(1,044)、ThruPlay(1,021)、動画の平均再生時間(00:12)、動画の再生時間(85.50%)
動画のパフォーマンス(グラフ)|AR動画(15秒)、動画再生数(1,255)、投稿へのエンゲージメント(1,125)、投稿へのエンゲージメント単価(¥1)、動画の平均再生時間(00:12)

 

投稿へのエンゲージメントを目的とした広告を掲載したところ、結果はインプレッション(広告の表示回数)が「1,269回」に対して、動画の10秒再生数は「1,044回(82.3%)」、ThruPlay(最後まで動画を見た回数)は「1,021回(80.5%)」です。

 

「8割の人が15秒の動画を最後まで見る」という結果でした。単純に比較はできませんが、インターネットの動画広告は「7割の人が3秒以内に離脱する」と言われていますので、ARのPR効果が確認できた実験だったと思います。



4. 企業でARを開発するには?


4.1 オーダーメイドでARアプリを開発

企業でARを導入する場合、まず最初に検討するのが、自社専用のARアプリをオーダーメイドで開発する方法だと思います。

 

この方法のメリットは、ARアプリに実装する機能を自由に選択できるということです。ゲーム機能を組み込んで勝った人にだけにクーポンを配ったり、GPSを使ったスタンプラリー機能を組み込んだり、さまざまな機能を実装することができます。

 

費用の目安は50〜300万円です。ただし自由度が高いために、ARアプリに多くの機能を詰め込み過ぎたり、マーカーを増やしすぎたりする傾向にあります。当初はシンプルなものを安く制作したいと思っていても、色々と要望が増えてしまい、次第に高額な見積もりとなりがちです。

 

あと、ARアプリをキャンペーンなどで使用する場合は、Android版とiOS版の2種類のアプリを開発する必要があります。制作業者から見積もりを取る際には、2種類とも開発対象であることを、必ず確認してください。

 

また、ARアプリを配布するにはベンダーの承認が必要です。Google Playで配布するにはGoogle社の承認が必要ですし、App Storeで配布するにはApple社の承認が必要となります。Google社の承認は比較的容易なのですが、Apple社の承認は厳しいので注意が必要です。

 

もし配布の申請がリジェクト(却下)された場合、具体的にどこが問題なのか、Apple社から指摘をしてもらえません。従って開発側で問題がありそうな部分に当たりをつけて、修正と申請を繰り返すことになります。スケジュールがタイトである場合、キャンペーンの開始日にARアプリが間に合わないこともあり得ますので、制作スケジュールには余裕を持たせた方が良いでしょう。

 

オーダーメイドの最大の問題点は制作費用です。多少、高額であっても機能的に充実したARアプリが必要とされる、「大企業の全国キャンペーン」での利用にオススメです。


4.2 セミオーダーでARエフェクトを開発

スマートフォンにインストールされているSNSアプリには、マーカーをトラッキング(追跡)する機能を搭載しているものがあります。これを流用してセミオーダーメイドでARを開発する方法があります。この作成したものは、ARアプリではなくARエフェクトと呼ばれています。

 

人の顔をトラッキングして、猫の耳を合成して表示するようなSNSアプリをご覧になった方も多いと思います。そこで使われている機能を流用します。顔の代わりに写真をマーカーにして、猫の耳の代わりにメッセージを合成すれば、販促ツールを作ることができます。

 

オーダーメイドと比べて、セミオーダーメイドは制作費用を安く抑えることができます。開発工数にもよりますが、年間利用料の目安は10〜50万円程度です。オーダーメイドと比較して、安く提供できる理由は次の2つです。

 

1つ目の理由は、SNSアプリの機能を流用するので、開発する部分を大幅に削減できるということです。メニュー画面やアカウントの管理などの基本的な機能は、SNSアプリのものをそのまま利用することができます。

 

2つ目の理由は、OSごとにARアプリを開発する必要がないということです。オーダーメイドの場合は、Android版とiOS版の2種類を作る必要があります。一方、セミオーダーの場合は、ARエフェクトを1種類作るだけで済みますので、単純計算で制作費用を半分に抑えることができるのです。

 

また、運用の面からもメリットがあります。SNSアプリは既にスマートフォンにインストールされています。個人設定さえ終わっていれば、投稿記事としてARエフェクトを送信するだけです。インストールする必要がありませんので、Wi-Fi環境も必要ありません。

 

ただ、このセミオーダーメイドには大きな弱点があります。それはARエフェクトには「ファイルサイズに上限がある」ということです。開発したARエフェクトは、SNSアプリ上で配信されますので、大きなファイルを送ることはできません。そのためにマーカーは1つしか登録できませんし、表示するCGも圧縮する必要があります。

 

Facebookアプリの場合であれば、ファイルサイズの上限は10MB、Instagramであれば4MBです。スマートフォンで撮影した写真のファイルサイズが、1枚あたり1.5MBぐらいであることを考えると、かなり厳しい制約条件であることが解ります。

 

また物体と物体との衝突、物体と床面との摩擦、物体にかかる重力といった、物理演算を取り扱うことができませんので、ゲーム機能を組み込んだ場合、オーダーメイドのARアプリと比較して大きく見劣りがします。

 

ただ、ARの利用目的を一つに絞り込み、CGの動きを事前に決めておけば、ファイルサイズを抑えることが可能です。上記でご紹介した動画は、Facebookアプリの上で動くARエフェクトです。ARエフェクトの機能を、メッセージと3Dキャラクターを表示することだけに絞り込んでありますので、ファイルサイズを2MB以下に抑えることに成功しています。「商品やサービスの告知」などで利用するなら、このセミオーダーメイドをオススメします。

 


4.3 レディメイドのARアプリをレンタル

年間の利用料を支払えば、レディメイドのARアプリを借りることができます。アプリなどを開発する必要がありませんので、直ぐに利用が可能です。

 

まずレディメイドARの最大の魅力は、何と言っても価格の安さです。課金の方法はさまざまですが、年間の利用料は1〜10万円程度です。最近では年間1万円以下で利用できるサービスも出てきています。

 

 ただ、制作費用を安く抑えることができる分、利用できる機能が限定されてしまいます。サービスを安く提供するには、より多くの企業に利用して貰う必要があるため、最大公約数的な機能となってしまうことは、致し方ありません。

 

多くのレディメイドARは、紙に印刷された画像をマーカーとして登録し、それに対して2次元の動画を合成するだけなので、3次元のARアプリと比べるとインパクトが低くなります。

 

ただ、ARとしてのインパクトが低いからと言って、プロモーションとしての効果が低くなると言う訳ではありません。シッカリとしたメッセージが込められた動画を作成すれば、販売促進として十分な効果が期待できます。

 

レディメイドのARアプリは、何と言っても低価格なのが魅力です。マーカーの数が数十種類になったとしても、そもそもの単価が安いため、コストが重くのしかかるということはありません。学習教材や商品マニュアルなど多数のマーカーを必要とする場合や、アイドルのイベント用など、表示する動画そのものにインパクトがある場合であれば、断然この方法がオススメです。


4.4 インパクトと制作費用はトレードオフの関係

 ARアプリをオーダーメイドで開発すると、インパクトはありますが制作費用が高くなってしまいます。また、レディメイドなら制作費用は安くて済みますが今度はインパクトがありません。セミオーダーメイドの場合は、機能の絞り込みに失敗すれば、どっちつかずの中途半端なものになってしまいます。

 

ARの導入方法を決めるにあたって最も大切なことは、ARを使う目的を明確にすることです。商品の告知に使用するのであれば、インパクトがあることは必須でしょうし、商品マニュアルで使用するのであれば、あまりインパクトは必要ないのかもしれません。目的を明確にしないままARを導入すると、企画側の自己満足で終わってしまいますので、注意がひつようです。

 

インパクトと制作費用はトレードオフの関係にあります。大切なのは、ARを使って何を達成したいのかを明確にすることです。



5. 企業が取り組むAR販促 - 13選


5.1 Budweiser

バドワイザーが開発した25周年キャンペーンのARアプリです。記念缶にスマートフォンのARカメラを向けると、AR体験ができるというものです。利用者はARのビデオや映像を、バドワイザー指定のハッシュタグとともに、Instagram、Facebook、Twitterに投稿すれば、抽選でバドワイザーステージのシーズンパスが送られるというものです。


5.2 Burger King

バーガーキングが開発した「Burn That AD」というARアプリです。マクドナルドのなど、競合会社のポスターに「Burn That AD」のARアプリをかざすと、ポスターがCGで燃え上がった後、バーガーキングのクーポンが表示され、販促につなげるというものです。クーポンを取得した日時や、クーポンを使用した店舗情報などを分析すれば、購買行動の精緻化に役立てることができます。


5.3 Warby Parker

米国のメガネメーカーであるWarby ParkerのARサービスです。iPhoneに搭載されている、顔の動きを追いかける機能を使って、メガネの試着を実現しています。メガネに留まらず、他のブランドとコラボレーションすれば、今後、トータルコーディネートでの提案が可能になると思われます。AIを使って過去の購買履歴などから顧客の嗜好を分析すれば、お客様にさらに反応を、さらに高めることができます。


5.4 IKEA

 「IKEA Place」は、スウェーデンの家具メーカーであるイケアが提供しているARサービスです。3,200点もの家具のCGを提供しており、ARを使って自分の部屋に家具を置いてみることができます。今後、住んでいる部屋の間取りと、置いてある家具をのサイズをスキャンすることができれば、更に精度の高いコーディネーションが可能となります。


5.5 Hyundai

現代自動車が開発したARを使ったオーナーズマニュアルです。ARで自動車のパーツを認識し、それに対する取扱説明を表示することができます。オイルのチェックなどを自分でやりたいがその方法が解らない、そういった人にピッタリのソリューションです。今後、自動車に設置されているセンサー情報を、現代自動車のサポートセンターに集約すれば、オーナーにチェックするべき箇所などをアドバイスする、新しいサービスも提供できるようになります。


5.6 US Army

米国陸軍が開発を進める軍事用ARシステムです。兵士が自分の置かれている状況を、ゴーグルを使って把握することができます。偵察用のリモコン飛行機やドローンから映像を作戦本部で集約し、部隊に指示を出すことができれば、さらに効率的な活動が可能になります。また写真ようなゴーグルタイプではなく、コンタクトレンズタイプのARデバイスの開発も進んでいます。


5.7 Blippar

Blipparが開発したAR地図アプリです。自分の目の前の道に、進む方向をナビゲーションするCGを重ねることができます。電車の運行システムなどとリンクできるようになれば、目的地まで最適なアクセスの提案が可能になります。現在はスマートフォンベースですが、メガネやコンタクトレンズタイプのARデバイスとリンクできれば、さらに活用範囲が広がります。


5.8 L’Oréal Paris

ロレアルパリ の「Makeup Genius」を使えば、ARを使ってメイクアップのシミュレーションをすることができます。商品のバーコードをスマートフォンでスキャンすれば、CGを使って自分の顔の映像にメイクを施すことができます。過去の購買履歴データなどを使えば、季節ごとや曜日ごとに違ったメイクの提案ができるようになります。また、提案に対する購買行動のフィードバックを行えば、さらに高度な販促の提案ができるようになります。


5.9 商船三井

商船三井が古野電気と共同開発した「AR航海情報表示システム」です。リアルタイム映像と航海情報を合成して表示することにより、航海中の操船などを視覚的にサポートします。海底が浅い場所を大型タンカーが航行する場合、航行できる水域が限定されますが、このような精度の高いナビゲーションシステムは、操船の強い味方になります。


5.10 AstroReality

AstroReality がNASA創設60週年を記念して開発した「NASA AR Noteboo」です。太陽系の動きをARアニメーションで見ることができます。ARはCGを使って動きを見せることができるため、科学技術分野と馴染みやすいテクノロジーです。教科書や図鑑などに、ARでCGを埋め込んでおけば、より臨場感のある授業を行うことができます。


5.11 Coachella

カリフォルニアで開催された音楽と芸術の祭典「Coachella」で使用されたARです。ARといえば比較的小さな3Dオブジェクトを使うことが多いのですが、これは見上げるほど大きなもので、マスクの巨人が包丁を振り下ろしてくるといった、とてもインパクトの強いものになっています。


5.12 SK Telecom

韓国の野球協会がSK Happy Dream Parkで実施した「SK Wyberns」というキャンペーンです。ドラゴンがスタジアム内を飛び回り、炎を吐いたり、地面に潜ったりするARです。アプリの画面に表示されている応援ボタンを押すと、ドラゴンがインタラクティブに動かすこともできます。



6. まとめ


6.1 ARの波に乗り遅れるな!

スマートフォンの普及に伴い、ファッション、自動車、医療、軍事など、ARは急速に利用領域を拡大しています。また今後5Gが普及し始めると、高速なリアルタイム処理が実現できるため、さらに利用用途は拡大します。

 

どの分野でも同じですが、一度波に乗り遅れると、後からに追いつくことは簡単ではありません。技術を使いこなすためには、ある程度の試行錯誤が必要だからです。そこで蓄積したナレッジの差が、簡単には埋まりません。

 

そこでオススメするのが、ARを活用する小さなプロジェクトをスタートさせることです。ARにどんな可能性があるのかを実感しておくことは、今後のプロモーション活動において、大いに役立ちます。