まず始めにWHYを伝えろ!


今日の論点

下記は船員募集の案内です。どちらに心を動かされますか?

 

A案

「船員募集、知識と経験が活かせる職場です。完全歩合制、未経験者OK、学歴不問、服装自由、悪魔の実の能力者優遇。」

B案

「この海の果てにすんげぇ宝があるって知ってるか?それを手に入れたヤツが海賊王になれるんだ。ワクワクしねぇか?聞いた事もねぇ冒険が待ってるっていうんだぜ!」

 

 

A案とB案を比較すると、B案に惹かれるものがありそうです。今回はなぜB案に惹かれるのかについて、探っていきたいと思います。


 クチコミ客を増やすブランド戦略 アルファブランディング

言葉が人を動かす

表現の違いによる感じ方の差

別の例をいくつか見ていきましょう。

 

機械工募集の場合

A案

「私たちは小型で高性能なオートバイを製造している。現在、自動車製造に事業を拡大するため、生産設備の拡張を図っている最中だ。エンジンの性能を高めるために機械工を募集しており、ぜひ君に来てもらいたい。給料は月額✕✕円、社員寮も完備している。」

B案

「一緒にル・マンを目指さないか?」

 

探検隊員募集の場合

A案

「契約社員募集、給与✕✕クローネ、防寒装備貸与、勤務地は南極、犬ぞり経験者優遇。業務の特殊性から今回は男性のみの募集とさせていただきます。」

 B案

「男子求む。危険な旅。低賃金。極寒。闇の中での長い歳月。危険と隣り合わせ。生還の保証せず。ただし成功すれば名誉と称賛が贈られる。」

 

 

A案が採用条件を列挙しているだけなのに対して、B案は相手の感情に訴えかける表現になっています。この表現の違いが、この後の行動に影響を与えるのです。


感情に訴えることの重要性

米国のコンサルタントであるサイモン・シネック氏は著書「WHYから始めよ!」(※)で、世界の偉大なるリーダーたちのメッセージには、共通のパターンが存在すると述べています。一般的なメッセージと、Appleのメッセージを例にすると、

 

 一般的なメッセージ

  • われわれは、すばらしいコンピュータをつくっています。
  • 美しいデザイン、シンプルな操作法、取り扱いも簡単。
  • 一台、いかがです?

 

Apple社のメッセージ

  • 現状に挑戦し、他者とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。
  • 製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。
  • その結果、すばらしいコンピュータが誕生しました。
  • 一台、いかがです?

 

サイモン・シネック氏はこの違いを「ゴールデン・サークル」というコンセプトを用いて解説しています。

ゴールデン・サークル

 

What:何をしているのか(商品、製品、サービス)

How:どうやるのか(手法、工程、差別化)

WHY:なぜやるのか(理由、ビジョン、理念)

 

一般的なメッセージは、商品を説明した後に、その方法を説明しています。「What→How 」の順番です。

 

一方、アップル社の場合はなぜそれをやるのか、まず自分たちのビジョンを説明した後に、方法と商品の説明をします。「WHY→How→What」の順番です。

 

まずこのWHYを説明することが大切だと、サイモン・シネック氏は解説しています。

 

※ サイモン・シネック,「WHYから始めよ!」, 45-61 , (日本経済新聞社出版 2012)


どうやってWHYを見つけ出すのか?

なぜそれをやるのか・・・自社のWHYを見つけ出し、顧客や従業員に対して明確に伝えることができれば、競合とは全く別のポジションを確立することができます。

 

過去を振り返り、さまざまな経験や価値観に触れた際に、どのように感じたのか、それらをベースにWHYを見つけ出すことが大切です。

 

そうして見つけたWHYを短い文章に落とし込むのですが、サイモン・シネック氏は著書「FIND YOUR WHY(※)」の中で、簡便な方法を示しています。それは下記を埋めることです。

 

【__貢献__】することで【__影響__】になる。

 

自社は何によって「貢献」するのか、またそれは他者に対してどのような「影響」をもたらすのか。この2つの項目を埋めることで、WHYを一文で表現することができると言っています。

 

もちろんコピーライティングに長けている方は、この方法にとらわれる必要はないと思います。要は「なぜそれをやるのか」を短い文章で表せれば良いのです。

 

※ サイモン・シネック, デイビッド・ミード, ピーター・ドッカー「FIND YOUR WHY」, 40-50 , (ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019)


大風呂敷を広げて大丈夫なのか?

一度、自社のWHYを文章にしてみると、かなり大風呂敷を広げてしまったと感じるのではないでしょうか。でも大丈夫です。大風呂敷を広げても問題ありません。逆にその方が良いぐらいです。

 

 

風呂敷が小さい場合、共感できる部分が少ないため、より多くの人を巻き込むことができなくなります。もし「ル・マンに挑戦する」ではなく「エンジンの馬力を改善する」であるなら、巻き込めるのはエンジン担当のエンジニアだけです。

 

もしアポロ計画が「人間を月面に到着させる」ではなく「新しい推進ロケットを開発する」だったなら、通信システムや着陸技術のエンジニアを巻き込むことはできませんし、そもそも国民の後押しも望めなかったはずです。

 

WHYが多くの人が共感できるものであれば、大風呂敷でも問題ありませんし、逆に大風呂敷の方が良いとも言えます。

 


「WHYから始めよ!」を社内に定着させるには

いままで見てきた通り、商品の詳細や使用方法を説明する前に、「WHY - なぜそれをやるのか」を説明しなくてはいけません。営業マンがお客様を訪問した際に、商品の機能比較や差別化ポイントを話していてはダメなのです。

 

それには個人の意識付けに依存するのではなく、組織としての仕組みを作り上げる必要があります。

 

たとえば、会社案内や提案書の冒頭にWHYを記載することで、自然な流れでお客様へ説明する、WebサイトのトップにWHYを記載するなど、否が応でも説明せざるを得ない状況を作り出す必要があります。

 

なお、私どもでは「WHYから始めよ!」を企業内に定着させるため「フォロアルファ」というツールを開発しました。もし宜しければお手すきの際にご確認ください。

 

みなさんも、このWHYを始めに伝えることで、お客様とより親密な関係を築いてみてはいかがでしょうか。