日本酒をブランディングするポイント


今日の論点

世界的に日本食の評価が高まっているためか、日本酒の海外輸出は好調のようです。ただ国内の需要は、あまり奮っていないようです。

 

せっかくお米の国に生まれたのですから、今回は日本酒のプロモーションについて考えてみたいと思います。


日本酒をブランディングするポイント クチコミ客を増やすブランド戦略 アルファブランディング

日本酒を選ぶ判断基準がない

清酒メーカーの実態

帝国データバンクの調査(※)によると、清酒メーカーは全国に1,254社存在しており、そのうち、903社(72%)が業歴100年を超えている歴史のある業界です。

 

国内の売上高は清酒業界全体で約4,416億円、ここ数年は横ばい状態が続いています。若年層の日本酒離れや、缶酎ハイなどのカクテル飲料の市場拡大が原因と言われています。

 

海外需要については、2006年から2016年の年平均成長率は6.7%と好調なのですが、日本酒の出荷量の3.5%でしかありませんので、業界全体を押し上げるほどのボリュームはありません。

 

そもそも、これだけいいお米が取れるのに、なぜ国内の需要が伸びていかないのでしょうか。

※出展:帝国データバンク「清酒メーカーの経営実態調査」(2017/12/21)


日本酒はパラメーターが複雑

特定名称 使用原料 精米歩合
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール  60%以下
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール  50%以下
純米酒 米、米こうじ
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール  70%以下
特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール  60%以下

国税庁のデータを基に簡易的な表記に修正

日本酒を購入しようと、一本を手に取ったとします。ラベルの裏にに記載されている情報を見て、購入するかどうかを決めましょう。

 

<使用原料・精米歩合>

国税庁によると清酒は原料や製造方法などの違いにより、8種類に分けられています。

 

表の使用原料の欄に醸造アルコールがありますが、これは日本酒の度数調整や品質調整のために用いられるエタノールのことです、本来は醸造酒ではなく混成酒なのですが、酒税法上は醸造酒と同じ扱いになっています。

 

あと、精米歩合というのは、玄米を精米する際に、削ったお米がどの程度残っているのかを示すもので、精米歩合の数値が小さいほど、たくさん削って美味しい部分だけを使用するので、高品質の清酒ができると言われています。

 

この表ですが、まず使用原料で純米酒と混合酒に分けて、それぞれ精米歩合で名称をつければ、少しはスッキリするのですが、それでも、純米吟醸酒と特別純米酒は、使用原料も精米歩合も同じですが「製造方法が異なる」ため名称も異なります。

 

<日本酒度・酸度>

「日本酒度」とは糖度を表す数値で、プラスになると辛口に、マイナスになると甘口になります。+3.5よりも大きな数値になると「辛口」、−3.5よりも小さな数値になると「甘口」と呼ばれます。糖度を表すのであれば、甘口をプラスにした方が直感的かもしれません。

 

これに加えて「酸度」というものがあり、これは清酒に含まれる有機酸(琥珀酸、林檎酸など)の度合いを表します。酸度が高いものを「芳醇(濃醇)」、低いものを「淡麗」と呼びます。例えば「淡麗辛口」は酸度が低く、日本酒度が高いと言うことです。

 

<産地>

日本酒の成分の約80%が水ですので、仕込みに使う水によって味か異なります。どこの地域で作られた日本酒なのかが重要視されるのは、この「水」が異なるからです。

 

ただ、一つの地域で一つのお米を作っている訳ではありません。山田錦、五百万石、美山錦など複数の品種があるため、考慮するパターンは「地域☓米の品種」となります。

 

<火入れ>

日本酒は出荷する前に2回の加熱処理を行います。1回目が貯蔵の前、2回めが瓶詰めの前です。ただ、この加熱処理を行わない日本酒があります。一度も加熱処理をしないものを「生酒」、貯蔵の前だけに加熱処理をするものを「生詰め」、瓶詰めの前だけに加熱処理を「生貯蔵」と呼びます。

 

<蔵元・杜氏>

原材料や製造工程など全ての条件が同じであっても、蔵元・杜氏が異なると味が変わります。以前、ある大企業に、製造工程で発生するデータを分析することで、発酵効率を向上させる提案したことがあります。その調査で解ったことなのですが、発酵装置を操作するオペレーターで、生産効率が10%近く変わってくるのです。全ての製造工程に、これでもかと言うほどのセンサー設置している最新の工場ですら、このような状況なのですから、杜氏によって味が異なることは当然だと言えます。

 

さて、ラベルに書かれているこれらのパラメータをもとに、日本酒を選ぶ訳ですが、パラメータが多すぎるため決められませんよね。要はこれらのパラメーターをいくらアピールしたところで、消費者の判断材料にはならないと言うことです。


消費者に刺さる判断材料とは

先ほどのパラメーターは、全て提供する側である蔵元の目線が基準になっています。これらの情報では、消費者は判断することが出来ません。消費者の目線で必要な情報を考える必要があります。

 

まず最初に、あなたの日本酒を誰が飲むのか、個人レベルまで落として考える必要があります。この人物像のことを「ペルソナ」と呼びます。

 

あるターゲット層向けて日本酒を購入してもらう方法を考える場合、どうしても幅広のプロモーションとなってしまうため、十分な効果を上げることが出来ません。たった一人を想定することが、刺さるプロモーションにつながります。

 

次に、このペルソナが、なぜあなたの日本酒を購入するのか、その理由を考えてください。晩酌用として買った・・・では不十分です。ペルソナは何かの「課題」があって、それを解決するために、あなたの日本酒を購入するのです。もっとペルソナを動かして、イメージを膨らませましょう。

 

今日の晩御飯はおでん、海でカレイを釣ってきた、北海道物産店でイクラをゲット。具体的に想像すると、そのペルソナに何を伝えれば、あなたの日本酒を買ってもらえるのかが見えてきます。

 

ペルソナの課題をあなたの日本酒やその他の付帯情報によって、適切に解決することができれば、それがクチコミとなり、新たなお客様が集まってきます。

 

では、このペルソナの課題を解決するために、あなたが提供できるバリューとは何でしょうか。

  • 日本酒に合うおつまみの作り方
  • 確かな杜氏の仕事ぶり
  • 購入されたお客様の感想
  • 理想的なカンの付け方
  • 清潔な製造工場
  • 原料となる米の紹介

いろいろと考えることが出来ます。これらの情報を消費者に届けることが大切です。


まず始めに伝えるべきこと

消費者の課題を解決するための情報を伝えれば、あなたの商品が選択される確率が大きく高まりますが、それだけでは十分ではありません。これらの情報をどのように伝えるのか、伝える順番が大切になってきます。

 

それはこれらの解決策を伝える前に、あなたの「信念」を伝えることです。どのような思いを持って日本酒を製造しているのか、まず始めにそれを消費者に伝える必要があります。

 

米国のコンサルタントであるサイモン・シネック氏は、世界の偉大なるリーダーたちがメッセージを発信する際には、まず始めに「信念」を伝えていると述べています。商品のスペックや使用方法だけを伝えても、心に響かないということです。

 

なお、この「信念」を語るための具体的な方法は、ブログ記事「まず始めにWHYを伝えろ!」に記載していますので、一度ご確認ください。

 

あなたの信念を伝え、そのあと消費者に課題の解決策を伝えれば、消費者はあなたのことを「信頼できる生産者」だと判断するに違いありません。