ファンを量産する京都橘高校吹奏楽部


今日の論点

YouTubeの動画で大人気の京都橘高校吹奏楽部。マーチングにかわいいダンスを取り入れた、驚きのパフォーマンスで観客を魅了しています。

 

「オレンジの悪魔」というニックネームとは裏腹に、その元気あふれるパフォーマンスは米国でも高く評価されており、あのローズパレードに2度の出場を果たしています。今回はこの人気の秘密を探ってみたいと思います。

 

あと冒頭の動画ですが、かなり中毒性が強く、何度も見てしまいます。忙しい人はクリックせずに、すぐこのブログを閉じましょう・・・さようなら。

 



顔写真:宮﨑 祥一/CEO, Alpha Branding Corp.

宮崎 祥一 (Shoichi Miyazaki) / CEO, Alpha Branding Corp.

SAS InstituteAvanadeTeradataなどの外資系アナリティクス企業でビジネス開発に携わる。海外で実践されている AI・アナリティクス実用化プロジェクト(購買行動分析、顧客嗜好分析、顧客接点分析、オムニチャネル分析)を、国内大手企業(流通、小売、飲料、食品、家電)に導入。2011年に株式会社アルファブランディングを設立し、ブランド育成事業を開始。2018年にAR事業をスタートさせ現在に至る。




ポジショニングと単純接触効果

京都橘高校吹奏楽部とは

京都橘高校吹奏楽部の創部は1961年。特にマーチングに力を入れており、全国大会に何度も出場している名門校です。しかし、2001年から2006年の6年間は関西支部大会止まりで、全国大会に出場できませんでした。

 

この状況を打破するために、2005年からはマーチングにダンスを取り入れ、2007年は晴れて全国大会で銀賞。2008年には全国大会で金賞を受賞するに至ります。

 

また快進撃はこれに留まらず、2012年にはアメリカ合衆国カリフォルニア州パサデナで開催されるローズ・パレードへ出場。このパレードは全世界200カ国以上に中継され、視聴者は数百万人と言われているビッグイベントです。さらに2018年には、なんとこのローズ・パレードに2度目の出場を果たすなど、まさに破竹の勢いです。

 

天使のスマイルで恐ろしい程のパフォーマンスを発揮することから、「オレンジの悪魔(Orange Devils) 」のニックネームで呼ばれています。


オンリーワンのポジショニング

私が言葉で説明するよりも、まず上に掲載した動画を「音声付き」で観てください。一般的なマーチングのイメージからは、大きくかけ離れていることがお解りいただけると思います。

 

一般的なマーチングでは、高い演奏技術に加えて、正確なドリル・フォーメーションで歩くことが求められます。また、もともと軍楽隊から端を発していますので、凛々しいイメージです。「演奏しながら凛々しく歩く」がマーチングの共通イメージと言って良いでしょう。

 

ところが京都橘高校の場合は、歩くのではなくダンス、凛々しいではなく可愛い。「演奏しながら可愛くダンス」という、他と全く競合しないオンリーワンのポジショニングを作り上げているのです。


ザイアンスの単純接触効果

しかし、京都橘高校吹奏楽部のパフォーマンスがいかに優れいていようとも、それだけでファンは量産されません。ファンを量産するには、世界へ拡散できるコンテンツが必要です。京都橘を応援する人たちが投稿する映像の素晴らしさが、ファンを量産するひとつの要因となっています。

 

人は驚いたモノについて、それが何なのか正確に理解したいという欲求に駆られます。自分は一体何に驚いたのか、何を凄いと思ったのか、それを知りたいと思うのです。

 

その欲求に答えるのが、YouTubeに投稿されている高品質の映像です。気になることがあれば、それを詳細に確認できます。楽器、ステップ、観客の反応など、気になったことを確認するために、何度も繰り返して映像を観ることになります。

 

また、人は何度も触れたものについて、愛着を持つ傾向にあります。これを「ザイアンスの単純接触効果」と呼びます。何度も見ているうちに、さらに引き込まれていくのです。

 

そして次の段階として、感動した体験を他の誰かと共有したいと思い始めます。家族や友人に話す、動画にコメントを書く、Twitterでつぶやく、ブログを書くなど、さまざまな方法で情報が拡散していきます。また、マーチング映像の場合、言葉の壁はありませんので、全世界へと拡散されやすかったとも言えます。


シルク・ドゥ・ソレイユのポジショニング

従来から存在しているものに対して、新しいポジショニングを与えることで成功した事例として、シルク・ドゥ・ソレイユがあります。

 

ご存知の通り、アクロバットをベースにしたエンターテインメント集団です。オリンピックのメダリストも多数所属しており、独自の市場を確立していると言って良いでしょう。

 

このシルク・ドゥ・ソレイユも、もともとはカナダのケベック州にあった、小さなサーカス団です。それを大道芸人のギー・ラリベルテ氏が、衣装や演出に高い芸術性を付け加えて、全く新しいタイプのエンターテインメントととして世に送り出しました。

 

いまのシルク・ドゥ・ソレイユを見て、象やライオンが出てくる従来のサーカスと競合していると思う人はいないでしょう。彼は全く新しいポジションを作りあげたのです。

 

 

京都橘高校吹奏楽部も同じです。従来からあるマーチングに「ダンス」と「かわいい」の要素を取り入れ、全く新たなポジションを開拓したと言えます。

 

2020年には東京オリンピック、2025年には大阪万博が開催されますので、もしかすると、京都橘高校吹奏楽部の勇姿を観ることができるかもしれませんね。