田舎暮らしが癒やされないワケ


今日の論点

定年退職後に田舎へ移住して、第2の人生をゆったりと楽しむ。最近、テレビ番組などでも良く見かけますよね。ただ楽しいのは最初だけで、だんだんと疲れて、都会へ戻って来る方も多いようです。今回はいくつかのケースを参考に、本当に楽しい生活とは一体何なのかを考えてみましょう。

 

田舎暮らしと言っても、色々なケースがあります。定年退職後に田舎に移り住む老夫婦であったり、都会で結婚してUターンして来た若いカップルであったり。置かれている状況が変わると、同じ田舎暮らしであっても感じ方が異なります。それでは具体的なケースを見て行きましょう。

 


田舎暮らしが癒されないワケ

田舎暮らしを始める前に

1.田舎で農業を始めた老夫婦

会社を定年退職して田舎に引っ越してきました。退職金、貯金、年金を取り崩しながら、第2の人生を楽しく過ごしたいと言うケースです。

 

農業に関してはズブの素人ですが、周りには農業のプロがたくさんいるので、人間関係さえ上手く構築できれば、野菜の作り方などを教えてもらえます。

 

野菜も商品として流通させる訳ではありませんので、曲がっていても傷がついていても問題ありません。自分たちが食べる分を作ることぐらいは、あまり高いハードルではありません。食費に関して、かなりの支出を抑えることが出来ます。

 

あと、家賃が安い事も魅力のひとつです。東京でワンルームを借りる金額で、一戸建てを借りる事が出来ます。仮に中古の一戸建てを購入してしまっても、大きな負担にはならないでしょう。

 

一見、良いことだらけのようですが、ひとつ問題があります。

 

先ほど「人間関係さえ上手く構築できれば・・・」と書きましたが、これが思いのほか高いハードルであることを心得ておきましょう。マンションの自治会程度のつながりをイメージしていると、間違いなく失敗します。

 

田舎は都会と比べて、人と人のつながりが濃いので、都会と同じような感覚で過ごしていると、村八分になってしまいます。ありもしない事を言いふらされたりして、その村から出て行かざるを得ない状況になってしまうのです。

 

それを避けるためには、会合や飲み会には積極的に参加し、農道の整備などの共同作業には率先して取り組み、冠婚葬祭の付け届けは絶対に忘れない。のんびりと自然に癒やされている場合ではないのです。

 

これって楽しい田舎暮らしでしたっけ? 


2.田舎でカフェを始めた若夫婦

次は若いカップルが田舎暮らしに憧れて、カフェをオープンするケースを考えてみましょう。先ほどの老夫婦と異なるのは、お金を稼がなければ、生活が成り立たないと言う事です。

 

確かに田舎には憧れますが、農村のど真ん中にカフェをオープンしても、誰も来そうにありません。従ってもう少し経済規模の大きな田舎街にお店を出すことを考えます。商圏規模で言うと、何とか1万人を超えている地方の町ですね。

 

ここで質問です。「あなたのカフェのお客様は誰ですか?」この質問にうまく答えることが出来るかどうかが、勝負の分かれ目です。

 

<オーナーAさん>

「私のお客様は地元の方たちです。この街に住んでいる人たちが、楽しく集えるようなカフェにしたいのです。」

 

 残念ながらAさんは、近々お店を畳まなければならないでしょう。地元の人を相手に、カフェでランチを提供する場合、あなたの競合は近所の安い定食屋さんであったり、カレーライスまで置いてあるラーメン屋さんであったり、スパゲッティのケチャップ炒めがある古い喫茶店であったりする訳です。当然、客単価は500~700円程度ですので、間違っても有機野菜で作った1,200円のランチが選択されることは無いのです。地元の住人をお客様にしたいのであれば、お酒を出すことで客単価をあげるしかありません。それでは、お店のコンセプトに合わないでしょうし、何のためにカフェをやっているのか、解らなくなってしまいます。

 

 

<オーナーBさん>

「このカフェのお客様は観光客です。名所旧跡である○○を観光した後、疲れた体を癒やしに立ち寄って下さい。」

 

オーナーBさんは、お店を続けていけると思います。このカフェの競合は、観光客向けのランチメニューを提供している、寿司屋、天ぷら屋、レストランといったお店です。お客様は非日常を満喫している観光客なのです。そこそこ美味しいものを安く食べたいと思っている、日々の日常を生きている地元住人ではありません。たぶん客単価は1,500~2,500円程度は見込めるでしょう。このお客様に対して、丁寧にブランディングすれば、1,200円のカフェランチは、全く高いものではなく、十分にバリューを感じてもらえるサービスなのです。

 

のんびりと楽しく田舎暮らしを始めるつもりが、田舎はあれやこれやと思いのほか大変なのです。まぁ、それでも都会で暮らすよりも、人間的なのかもしれませんね。